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???「あーあ、残念だなぁ…」
言葉の意味とは裏腹に、
その声は可笑しそうに弾んでいた。
???「僕ひとりで始末しちゃうつもりだったのに。
斎藤君、こんな時に限って仕事早いよね。」
恨み言を告げながらも、楽しそうに微笑む。
一「俺は務めを果たすべく動いた迄だ。
…あんたと違って俺に戦闘狂の気は無い。」
???「うわ、酷い言い草だなぁ。」
まるで僕が戦闘狂みたいだ、とその人は笑う。
一「…否定はしないのか。」
斎藤と呼ばれた人は呆れ混じりの溜息を吐き、
そして、私達に視線を投げかけてきた。
???「でもさ、あいつらがこの子達を
殺しちゃうまで黙って見てれば、僕達の
手間も省けたのかな?」
その言葉で私は私達が追い込まれているのだと改めて理解する。
一「さぁな。…少なくとも、その判断は俺達が
下すべきものでは無い。」
…つまり、判断を下す人はまだ他に居る、
ということか。
言動からするに、この人達は
組織的に存在している。
…そう言えば、京の町の人が
浅葱色の隊服を着込んだ集団の事を
言っていた気がする。
『…まさか…』ボソッ
その時、後ろから声が聞こえた。
千鶴「っあ…」
怯えた様な、千鶴の声。
振り返ると、千鶴に刃先を向けた男。
???「…運のないやつだ。」
私は急いで自分の刀で男の刀を弾く。
???「!?!?」
私は千鶴を背に庇う。
男は、刀を握る手を強くした。
そして、私に斬りかかってくる。
触れた刃と刃から火花が飛び散る。
ギリギリと鉄と鉄が擦れ合う音も聞こる。
そこから
きらきらと降り注ぐ月光。
その輝きが私には何故か舞い散る花びらを
思い起こさせた。
まるで、狂い咲きのさくらのような。
星明かりに照らし出された端整な顔。
色んな情報が目に飛び込んでくる。
___けれど。
それらの情報より、
私の意識を捕らえたのは、
彼の瞳。
確固たる冷厳さの内側で
微かに何かが揺らいでいる。
暫くの間、
私が刀をぐん!と押し退け、
男の腹を思いっきり蹴飛ばし、距離をとる。
男は顔を歪ませる。
そして、刀をしまう。
???「…良いか。逃げるなよ。
背を向ければ斬る。」
私は刀を男に向けたまま、男を睨みつける。
???「あれ?良いんですか?土方さん。
この子達、さっきの見ちゃったんですよ?」
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作者名:星空海月 | 作成日時:2021年3月1日 13時