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…助けられた?
いや、違う。
???「ひ、ひひひ…」
浪士3「た、助け___」
命乞いをしながら後ずさる浪士。
そんな彼に、浅葱色の羽織を着た人々は
何の
刀を振るった。
浪士3「うぎゃぁぁぁぁああああ!!!」
???「ひゃははははははははは!!!」
耳を
甲高い笑い声が重なる。
力任せに刀を振るう浅葱色の羽織の人々。
技巧も何も無い、ただの滅多切り。
耳に聞こえる絶叫が、
次第に弱々しく消えていく。
__殺された。
私の前で人が殺された。
彼らは息絶えた浪士を、繰り返し
何度も何度も何度も何度も、
操り返し、
斬って刺して突いて裂く。
肉を切り、
骨を断ち、
血を流す。
__他者の命を暴力で侵したい__
ただそれだけの狂気があった。
__こんなの、人間じゃない__
彼らは壊れている。
喉が詰まるようで息が出来ない。
鼻先を掠めた濃い臭いこそ、
溢れ返る血の臭いなのだと
ようやく理解できた。
少し吐き気を覚えながら、
ぎこちなく後ろを振り向く。
千鶴は相変わらず目を瞑り、耳を塞いでいるが震えている。
そして、目を開いて一言。
千鶴「…逃げなきゃ…」
震える唇で言った。
のそのそと震える足で立ち上がった千鶴。
そして、
木の板に倒れ込み、木の板を倒してしまった。
千鶴「『!!!』」
ばっ!と路地から顔を出し、
浅葱色の羽織の人達を確認する。
浅葱色の羽織を血で赤黒く染めた彼らは、
ゆっくり、振り返る。
新たな獲物を見つけた肉食獣かのように、
浅葱色の羽織の人々は歓喜に打ち震える。
『千鶴、目を瞑って耳を塞いで!』
千鶴「え…?」
『何があっても、私の方を見ないで!
でも私から離れないで!
何があっても、私に背を向けておいて!』
千鶴「うっ、うん。」
千鶴は言われた通り、
再び目を瞑り、耳を塞いで、その場に
しゃがみ込む。
守らなきゃ。
何があっても。
狂った殺意は笑いながら駆けてくる。
私は腰の刀を引き抜く。
そして、浅葱色の羽織の人々に刃先を向ける。
__その時。
『…え…?』
彼らが刀を振るう前に、
鋭い白光に両断された。
びしゃり、と音を立てて
地面に広がる鮮血。
熱くて生臭くてぬるりとしたもの。
強くなった吐き気は、その直後、
より強い風に吹き飛ばされた。
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作者名:星空海月 | 作成日時:2021年3月1日 13時