検索窓
今日:2 hit、昨日:9 hit、合計:1,786 hit

ページ4



浪士2「餓鬼の癖に良いもん持ってんじゃねぇか。」

浪士達が見ていたのは、
私達と言うより私達が持っていた刀だった。

浪士3「小僧達には過ぎたもんだろ?」

浪士1「寄越せ。国の為に俺達が使ってやる。」

千鶴「っこれは…」

…千鶴が持っている小太刀は、
代々受け継がれているとても大切な小太刀。

__絶対に渡す訳にはいかない。

でも…話して分かってくれるような
相手じゃない。

どうする…?

千鶴を逃がして3人と斬り合い?

いや、2人が私と斬りあって、
もう1人が千鶴の方に行けば守れなくなる。

だからと言って、背で庇いながらとなると
背後に回り込まれて、人質として
千鶴を取られると守るに守れない。

私を殺したあと、千鶴を殺す。

どうする…考えろ、考えろ…!

その時、千鶴が私の手を引いて走り出した。

千鶴の選択肢は、逃げる、か。

浪士2「__あ"!?
おい、待ちやがれ小僧共!」





千鶴「っもう、しつこいなぁっ!」

随分走ったように思えるが、
変わらず浪士達は怒鳴りながら
追いかけてくる。

私達は狭い路地を駆け抜ける。

浪士達がまだ追いついていない事を確認して、
私達は家と家の間に身を滑り込ませた。

立て掛けられた木の板達は
私達の姿を覆い隠してくれる。

千鶴「はぁ、はぁ…」

震える腕で自分を抱き締めるかのように
息を落ち着かせながら蹲る(うずくまる)千鶴。

そろそろ来るか?
そう思った時。

浪士1「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

彼らの絶叫が聞こえてきた。

千鶴「な、何っ!?」

震えながら涙目になる千鶴。

私は千鶴の口を抑え、
人差し指を自分の口に持っていき、
静かにと、伝える。

こくこくと頷く千鶴を抱きしめる。

『耳を塞いで、目を瞑ってな。』

千鶴「っねえさ…兄様は…??」

『ちょっと見てくる。』

千鶴「で、でもっ!」

『大丈夫、死にはしない。』

千鶴「絶対…?」

『絶対。絶対帰ってくるから、
ここで待ってて。』

うん、と頷いた千鶴は、
目を瞑り、耳を塞いだ。

浪士2「畜生、やりやがったなっ!」

浪士3「くそ、なんで死なねぇんだよ!
……駄目だ、此奴ら(こいつら)刀が利かねぇっ!」

怖い、とかは不思議と思わなかった。

ただ、千鶴を守らなくては。

そう思った。

そして、路地から顔を出し、駆けて来た道を
覗き込む。

私の目に映ったのは___。

__月光に照らされた白刃の閃き。

__翻る(ひるがえる)浅葱色の羽織。

…助けられた?

4→←2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (3 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
14人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:星空海月  | 作成日時:2021年3月1日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。