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千鶴「ごめんね、姉様。
無理言って京まで一緒に来てもらって…。」

『千鶴を1人にするよりはいいさ。
それに、今は兄様だろう?』

千鶴「あっ」

慌てて口を抑える千鶴。

千鶴「ごめんね、えと…兄様。」

『大丈夫。』

ぽんぽんと頭に手を置く。

ふにゃっと笑った千鶴の顔は、
だんだん暗くなっていく。

千鶴「父様…。」

あちこちから浪士が集まっている京の都。

決して安全な場所ではない。

そんなところに
千鶴1人行ってらっしゃいなんて
出来る訳が無い。

侍という権力を笠に着て
暴力を振るう乱暴者達。

そんな危険な場所に
1人で行かせられる筈がない。

千鶴「あぁっ、もう!」

『!?』

いきなり大声を出したと思えば、
自分の頬をぱしん!と叩く千鶴。

『ど、どうした?何かあった?』

千鶴「え?あ、ううん何でもないよ。
ただ、良くない可能性ばっかり考えちゃうから…」

『成程ね。でも自分は大切にしなきゃだよ?』

千鶴「うん!…泊まる場所、探さなきゃね。」

空を見れば夜も更けているし、
人通りも少なくなっている。

『そうだね。
…父さんを探すのにどれくらいかかるか…。
持ち合わせにだって限りがあるし…』

千鶴「…上手に節約すれば、1ケ月くらいは京で生活していけるはずだよね?
その間に父様が見つかれば最良だよね。
…1ケ月もあれば、松本先生だって
帰ってくるかも。」

『そうだね。兎に角、出費は出来るだけ安く
抑えないと。』

私達は大股で歩き出す。

普段と違い、袴を履いているから動きやすい。

女の子の旅は色々狙われやすいからと、
千鶴の提案でぱっと見、男の子に見えるように
変装した。

そのお陰なのか、
道中は何の問題も起きなかった。

__だから私達は油断していたのかもしれない。

ここは危険な京の都だと知っていた筈なのに。

浪士1「おい、そこの小僧。」

__実際に浪士に声を掛けられた時、
激しく後悔した。

千鶴「『!?』」

弾かれたように私達は振り返る。

…そこには3人の浪士が
私達に視線を向けていた。

『…何か?』

千鶴を背に庇うように千鶴の前に立った。

そして、腰にかけてある刀に手をかける。

千鶴が父さんに護身術を学んでいる時に、
私もまた護身術を父さんに習った。

そして、いつ何があってもいいように
密かに道場に通い、竹刀や木刀を用いた
稽古を習っていたのだ。

それなりに、刀は使える。

こんな浪士達、私だけで何とかできる。

3→←1〜序章〜 文久三年十二月



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作者名:星空海月  | 作成日時:2021年3月1日 13時

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