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??「すいまっせん。これ、なんぼです？」
“………！”
そんときやった。
とある人が、歌えんくなったうちを買ってくれた。
ボロボロで………オルゴールとして
機能せえへんうちを買い取ってくれた。
「これですか？これ、壊れているんですよ」
??「はぁ、？壊れてるんです？
見たところキレーな箱ですけど」
「これはオルゴールですよ。
ネジを巻くと音が出るんです。ご存じない？」
??「へぇ。知りませんでしたわ。
こんなもんがあるんやなぁ」
「って、嗚呼。刀剣男士様でしたね。
良ければタダで差し上げます。
壊れてて、もう動かなくなって
しまってましたので」
??「お兄さん太っ腹やなぁ。
んじゃ、有り難く貰いますわ」
彼はうちの本体を抱き上げて、連れて帰った。
それから彼は器用にうちを修理し、
出来る所まで復元してくれた。
綺麗に埃を拭いて、丁寧に部品を組み立てたり、
交換して………前ほどではないけど、
うちはまた歌えるようになった。
??「──、─。土産やで」
??「わあっ！“──”、これどうしたの？」
??「骨董屋で貰うて来てん。
ボロボロやったからうちが直したんや。
せやからあまり綺麗な音やないけど」
??「十分綺麗じゃん！どこが悪いのか分かんねぇ」
??「よかったねー、お前」
彼は大切な誰かにうちをプレゼントしたようやった。
そこで思い出した。プレゼントされた最初の、
最初の持ち主の所有物になれたあの日の、
嬉しかった気持ちを。
彼は、思い出させてくれた………
忘れていた、大切なものを。
彼がプレゼントした相手は
“良かったね”と頭を撫でてくれた。
付喪神として目覚めていなかったうちやったけど、
頭を撫でてくれた手の暖かさが、
今も………胸にある。
温かい。あったかい。
そう。うちは………誰かの為に、
歌って喜んでもらう為に生まれた。
誰かを癒やす為に生まれたんやって。
思い出すことが出来たんよ。
彼に、会いたい。
付喪神の、人の形を保てるのであれば、
この温かい気持ちを、感謝の気持ちを
伝える事が出来る。
うちの言葉で伝えたい………
会いたい。会いたい………
彼はどんな顔をしてるんやろう。
うちに大きな影響を与えた彼。
頭を撫でてくれたあの温かい手の持ち主。
まだ、この目で見たことないあの人の顔は、
姿は？どんな人やったんやろうか。
知りたいんよ。
オルゴールside〜end〜
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2021年2月27日 11時
