【刀剣乱舞】壱と出会う話４章 (ページ11)

今日:20 hit、昨日:5 hit、合計:41,494 hit

130pager ページ11

･

少しだけ、昔を思い出した。

それは得体の知れない何かから逃げる情景。
冒涜的で、狂った闇。私に迫るモノ。
それから必死に逃げる自分。

“可愛い、可愛い………”

“愛しい人の子”

“我ら(神々)に愛されし、我らの愛し子”

“嗚呼、何と美しい瞳か”
“嗚呼、何と香しい桜の香りか”

私は何度も神隠しにあった事がある。
神域に閉じ込められ、神域の主の絶対的な力の前に
生きる気力を何度も何度も………失った。

そこから我に帰っては自力でどうにか
私を閉じ込めていた神域から脱したが、
今も、私のナカには………
悍ましい何かが蠢いている。

“逃しはしない”

“そなたは、我らから逃れられぬ”

絶対的な力を持つ“カミ”から与えられた何か。
その“何か”を植え付けられた私は………

嗚呼。考えるだけでも気が狂いそう。
耳を塞いでも、囁かれる神々の言葉。
理解しないように、応えてはならないように。

私は今まで神々の知識を拒絶し、
身を守る術もあえて覚えないようにして来た。

私を守る者は居なかった。
私は私を守るしか出来なかった。

その生き方しか、私は知らない。
だから、私は他者に優しくなれない。

『(でも、切国さんの言うとおり、
身を委ねる事が出来たら…………)』

少しは、心休まる事が出来るかな………
神々から逃げる為に走り続けては来たが、
流石に疲れてしまった。

普通の人の様に生きられない、
冒涜的な世界でしか存在出来ない自分は
孤独でしかなかった。
そして生きるのを諦めた………
その時に赤神さんに拾われたんだ。

ここ数週間、本丸で過ごして来たが、
本丸は居心地が良かった。
ようやく、羽を休めることが
出来たような気がした。

だから………私は本丸を、
赤神さんの力になりたいと思ったんだ。

切国さんが去った方角を眺めながら、
ゆっくりと過去を振り返る。
………昔の事は忘れてしまおう。

忘れてしまえば、楽になれる。

─リーン───

──リーン───

『？』

ふと、静かになった空間で耳を澄ましていた時、
どこからか金属音がした。

綺麗な音色だった。
鉄琴のような美しい音色………
とても癒やされるような、綺麗な音。

………？誰かが鉄琴を演奏してるのだろうか。
その音が気になって、私は部屋の前の
廊下に顔を覗かせた。

廊下に一つの影がある。

そこには、少女がいた。