†佰伍拾肆† “蛍の欠片” ページ35
その日の夜。
お決まりの記憶の夢が流れてきた。
これは面影様の記憶。
目の前には眼鏡をかけた人と、
赤毛が目立つ少年がいた。
何となく二振りは明石様と愛染様だと
いうのが分かった。
そこには蛍丸様はいない。
面影様は遠くから二振りを見ているだけだった。
愛染「まさか、追放されるなんて…………
蛍丸…………あのままじゃ蛍丸が折れちまう」
明石「………国俊」
愛染「？国行…………？」
明石「自分、ここまで腹立ったのは始めてやったわ」
そこにいたのは、ギラギラと目を釣り上げ、
ギリッと力の限り手を握り締めて
手のひらから血を流す明石様がいた。
愛染様も、気持ちは同じようで
幼い容姿からは考えられないほどの
殺気を滲ませていた。
そんな二振りの間の向こうには、
泣き出しそうな…………悲痛に歪められた面影様の顔が
そこにはあって…………
“もう止めてくれ…………”
“もう見たくないっ”
“そんな顔が見たいんじゃないんだっ！”
“止めて…………止めてっ！！”
話せない筈の彼の声が聞こえた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
それから場面が変わり、
明石様と愛染様と思われる二振りの刀が
無造作に転げ落ちていた。
慈悲もない豪雨の中、血塗れの大太刀を持った
面影様が感情のない目で二振りを眺めている。
面影「…………ご…………ご、え…………え…………
ごえ、ね…………ごえ、ん…………え」
“ごめんね”
必死に言葉を紡ごうとする声は、
言葉とは呼べない下手なものだったが、
雨と共に流れた彼の涙。
そしてその言葉は…………確かに謝罪の意があった。
“おやすみ、俺の家族”
“俺の大切な兄弟達”
“蛍丸は、俺が守るよ”
“お前達がいた時代まで待って…………”
“きっと、蛍丸と一緒に迎えに来るから”
“だからそれまで、おやすみ”
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
『…………ぅ』
面影「【起きた？】」
目が覚めると、スケッチブックに
刻まれた見慣れた文字があった。
首だけ動かすと、私の側でまた
にっこり笑っている面影様がいる。
もう朝なのか。
彼は私の額に手を添えていて、
そこから神気が溢れているのを感じとる。
『…………面影様、貴方が見せたの？』
面影「………………」
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 368人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冷泉 雪桜(プロフ) - tomo10260403さん» コメントどうもありがとうございます！薄桜鬼も読んでくださって……感謝でしかないですね！これからもよろしくお願いいたします (2019年9月17日 12時) (
レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
tomo10260403(プロフ) - 冷泉 雪桜さまの作る作品の虜になりました！薄桜鬼も刀剣乱舞も一気に読んでしまって、小説を読むのが苦手なほうなのですが、のめり込むようにするすると入ってくる文章に、夢中です！ (2019年9月16日 17時) (レス) id: f4aa91fff9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2019年9月6日 1時
