†佰肆拾壱†【源氏・蛇の章】“終” ページ22
それから…………
前田「膝丸様、さあ」
獅子「もっと近くに来いよっ！」
膝丸様の手を引っ張って、獅子王様と前田様は
髭切の下まで彼を導く。
膝丸様はガラス越しにある自分の兄の姿を見て
一度躊躇うが、そっとガラスに手を添える。
それから目を閉じて、ゆっくりとそのガラスに
額を当て、そのまま動かなくなった。
その閉じられた瞼裏の光景は、
恐らくあの兄弟にしか分からないものが
見えているのだろう。
私はそんな彼の後ろ姿を見守ることしか出来ない。
獅子王様達も、遠目から見守っている。
『……………………彼に会ってあげないんですか？』
??《僕はあの子自身の兄じゃないからね》
視線は膝丸様の背中を見るが、
私の言葉は別の者に向ける。
ふわりと隣から一つの気配が降りた。
見なくても分かる。本霊の髭切様だ。
ゆっくひと左を向くと、綺麗な横顔がそこにある。
髭切《願いを叶えてくれてありがとう。
蝶達もこれでやっと浄化されたよ》
『…………彼の記憶に触れました。
貴方の回りにいた蝶は…………
分霊の髭切様の記憶の一部が
形作っていたものだったんですね』
今なら、分かる気がした。
神堕ちした膝丸様から流れてきた時に
印象に残っていた蝶。
それは髭切様が無意識に記憶を紡ごうとした
感情が蝶の形となったもの。
それが本霊である隣の神様に群がっていた。
もしかして…………蝶が群がって私をあの時導いたのは、
本能的に帰ろうとしたのだろうか。
本霊である髭切様の下へ…………
記憶を奪われないように。
髭切《どうして蝶の形にしたのか、
自分の事ながら良く分かってないけどね》
『…………………』
髭切《僕はあの子には会わない。
僕の弟は、この現世に残っている弟ただ一人だから。
…………ま、気が向いたら、
その内に君達の下へ分かたれた僕は行くさ。
大丈夫、あの子は強いから。信じておあげ》
『！髭切っ…………さ、ま？』
獅子「？主、どうした？」
次に振り向いた時は、
もうそこには髭切様はいなかった。
呆けている私に、獅子王様が呼び掛ける。
彼は獅子王様達にも姿を見せてはいなかったようだ。
「“主”」
それと共に私を“主”と呼ぶ声が降ってきて。
膝丸「帰ろう、本丸へ。思い残すことはもうない。
連れてきてくれたこと、感謝するぞ」
私に、手を伸ばして………
彼は“帰ろう”と言ってくれた。
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冷泉 雪桜(プロフ) - tomo10260403さん» コメントどうもありがとうございます！薄桜鬼も読んでくださって……感謝でしかないですね！これからもよろしくお願いいたします (2019年9月17日 12時) (
レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
tomo10260403(プロフ) - 冷泉 雪桜さまの作る作品の虜になりました！薄桜鬼も刀剣乱舞も一気に読んでしまって、小説を読むのが苦手なほうなのですが、のめり込むようにするすると入ってくる文章に、夢中です！ (2019年9月16日 17時) (レス) id: f4aa91fff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2019年9月6日 1時
