挨拶 ページ5
朝起きて身支度を終えると、職員室に顔を出すのがルールになった。私がドアを開けて「おはようございます」と挨拶をすると、パソコンに向かって作業をしていた教師たちも、コーヒー片手に談笑していた教師たちも、動きを止めてこちらを見る。
「おはよう、空」
職員室内にいた教師たちの声を聞き付けた根津さんは、校長室から出てきて「おはよう、空くん」と返してくれる。
雄英の教師は、私のことを下の名前で呼ぶ。理由は分からないが、別に悪い気はしない。
「おはようございます」
「昨日は、眠れたのか？」
私が根津さんに挨拶を返すと、相澤さんがこちらを向いたまま話しかけてきた。私はそれに、軽く頷く。
「まあ、なんとか」
「化粧水と乳液は？髪は…ちゃんと乾かしてるわね」
毎日、香山さんは私にそう確認してくる。私はその問いかけに、軽く頷く…これが、テンプレだ。
「そういえば、今年からオールマイトが着任するんだけど、しってた？」
「まあ。でも、興味無いんで」
その言葉に、香山さん含めほとんどの教師が笑った。
私は…ヒーローが何なのかわからない、ヒーローの在り方がわからない。でも、困った時に助けてくれるのがヒーローなら、苦しい時に笑顔にさせてくれるのがヒーローなら、私は今まで生きてきた中で、1度ものヒーローには出会っていない。
私は雄英に引き取られることを望んでいたなかった。私の今は、生きると言うより、“生かされている”と言う方がしっくりくる。
「それ、オールマイトに言ったらダメよ？新米だから、純粋に傷ついちゃうわ」
「気をつけます」
私はそう返すと、軽く頭を下げてドアを閉めた。そして、相澤さんが担任をするA組に向かって歩く。
窓の向こうから聞こえる賑やかな声をかき消すように、私はワイヤレスのイヤホンを両耳にさした。このイヤホンは、山田さんが誕プレにくれたもので、値段は脅威の5万円超え。
防水性、耐火性、耐衝撃性に優れている、ワイヤレスイヤホン界、トップクラスの性能…らしい。私にはいまいち分からない。
だけど、周りの音をシャットアウトする機能があるのはありがたいなと思う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぁ - 珍しく台本書きでも、改行で誤魔化す事もなくしっかりした文章を読めてかなり満足しました。CSSもシンプルで良いですね、影ながら応援してます。 (2022年10月20日 17時) (
レス) @page7 id: fefad6577a (このIDを非表示/違反報告)
闇雲空(プロフ) - みゆかさん» わわ、みゆか様も受験生なんですね！！共に頑張りましょう！！ (2022年10月3日 15時) (レス) id: cfd39d529f (このIDを非表示/違反報告)
闇雲空(プロフ) - アカリさん» ドンピシャ作品を作れて嬉しいです！！お気遣い、ありがとうございます。更新頑張ります！！ (2022年10月3日 15時) (レス) id: cfd39d529f (このIDを非表示/違反報告)
みゆか(プロフ) - 夢主ちゃんの性格、主様の書き方‥‥めっちゃ好きです() 私も受験生なので、一緒に頑張りましょうね！！ (2022年10月3日 15時) (レス) @page17 id: cc51e57412 (このIDを非表示/違反報告)
アカリ(プロフ) - シリアス且つ原作沿いもので、ここまで自分ドンピシャな作品に出会えるなんて思いませんでした！主様のペースで、更新頑張ってください！ (2022年10月3日 15時) (レス) @page17 id: e58062aad0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：闇雲空 | 作成日時：2022年9月29日 18時
