２ ページ23
.
ユタヒョンの家族はみんな、Aがどこにいて何をしているのかも知っているんだろう。
仕切りに「とにかく大丈夫だと思う」と取り繕う姿を見ていれば、自分だけじゃなく誰にだって解ったと思う。
それでもただ一言さえ、自分にはAの情報を与えようとしなかった。
ユタヒョンが統制しているのか、それともAに口封じをされているのか。
結局オレが日本に行って仕入れた情報は、ユタヒョンの家族がヒョンと同じく、嘘をつくとき右側に目線を流す癖があることくらいだ。
「そう思うと、Aヌナは隠しごとが上手だったね」
「かもな。隠されてる事すら知らなかったくらいだから」
「……マクヒョンさ、そろそろユタヒョンの口を無理矢理にでも割らせたらどう？」
「それが出来たらこんなに苦労してないだろ」
「じゃあいっそ、物理的に口を割ってみるのはどう？僕とマクヒョンでユタヒョンの口を上下に、こう」
「ヘチャニ……」
「だってそれ以外に方法が見つからないんだもん」
「じゃあ聞くけど、ヒョンに無理やり言わせて、ヘチャニがオレならどうする？」
「はあ？速攻で会いに行くに決まってんじゃん。今更何言ってんの」
「それこそ無理だって」
「どうして！」
「ユタヒョンがAの居場所をオレに教えたって事になれば、どういう結果になっても損をするのはヒョンだからだよ。ただでさえ板挟みの状態なんだろうし」
「そうかなぁ」
「最悪の場合、今度はユタヒョンからも逃げ出す可能性だってある。そうなったら可哀想だろ」
「……だったら、ヌナに会えない僕たちは可哀想じゃないの？」
呟くような小さな声でそう言ったヘチャンは、不服そうに小さく首を振った。
納得のいかない顔をして、口を付けたマグカップに「あちっ」と言葉を零す。
「なあ、ヘチャニ」
「ん〜？」
「お前は別に、無理して手伝ってくれなくても良いんだからな」
「よく言うよ、あからさまなガセに踊らされてジャングルに行こうとしたのは誰だっけ？」
「なっ！あれは、その……」
「なんにせよ、ヒョンの不得意は僕がカバーしてあげなきゃ」
「……自分からAに会いに行くわけでもないのに、どうしてそこまで」
「それが弟としての義務だからだよ」
「お前がいなくたって、オレは」
「一人で頑張るって言うんでしょ？僕もそう思う。だってマクヒョン、いつまで経っても強情なんだもん」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1263人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さっちゃん(プロフ) - 作品読ませていただきました。途中胸が苦しくなるほど、とても良い作品でハッピーエンドで終わり良かったです。またトキメキと良い意味での胸の苦しさを求めて何度も読もうと思います。素敵な作品をありがとうございます。 (9月26日 22時) (
レス) @page49 id: 585b81384e (このIDを非表示/違反報告)
ちるぬな(プロフ) - 初めてこの作品を読ませていただきました。言葉遣いからストーリー構成まで、ほんとうに好きです。素敵なお話ありがとうございます。これからまた何十回と読ませて頂きます^_^ (9月20日 21時) (レス) @page49 id: 7c0a70e250 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» 私こそすみません…！作品の方また楽しんでいただければ幸いです！ (2021年8月31日 11時) (レス) id: 9dd39ae13b (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - せのさん» そうだったんですね！失礼いたしました...！ (2021年8月30日 21時) (レス) id: ef764b671d (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» こちらこそ読んでくれてありがとうございます〜〜！！Twitterはしてないので教えられず……！ (2021年8月30日 16時) (レス) id: 01bd2f8507 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：せの
| 作成日時：2021年8月2日 0時
