私の話 ページ18
A視点
天井に付いている明かり取りの窓から、光の帯が差し込んでいる。
その光の帯の中でほこりが舞っているのがキラキラと光り、まるで宝石の欠片のように思える反面、窓を開けてきちんと掃除をしなければとも思う。
そんな思考も、悠太くんがいとも容易く元に戻してしまった。
『まだ帰ってくる気ないん？』
「うん」
『え〜！』
「悠太くんだって旅行が出来て楽しいって、毎回そう言ってるくせにそんな事言う？」
パソコンデスクに座りながらそう通話口に返すと、悠太くんが「しゃあないなぁ」と残念そうに呟いた。
そのまま航空機のページを開いて悠太くんのスケジュールを聞き、国際線のチケットを予約していく。
根が兄気質で尽くしたがりのこの人だ。
渡航のあれこれに関して、私から全ての世話をされることにそろそろ飽きてきたんだろう。
「そうだ、最近近くに美味しいパン屋さんが出来てね」
『そんなんこっちだってあるわ』
「それがなんと、コーヒーも美味しいらしくて」
『もうすぐ離れる癖にそんな良い場所見つけてくんな』
あれから私は、住む場所をたびたび変えて生活をしている。
自分が“過去の物”となって随分時間が経った。
全然関係のない異国の地で隠れるように暮らしていても、私の存在に気付く人はいたし、どこから情報が漏れているのか、私を訪ねてわざわざやってくる人もいた。
現役の頃から思っていたけど、あの人達はどうやって情報を掴んでいるんだろう。
狭い身内すら知らないはずなのに。
会いに来る人たちは、それぞれ反応も様々だった。
会えたことに興奮している人もいれば、怒っている人だっていたし、泣く人も笑う人もいた。
最初の頃、さすがに危ないんじゃないかと思って、現地の警察に届けようと思った事もあったけど、結局いたちごっこじゃないのかと思ってやめた。
一人ひとり、目を合わせて話を聞いてあげると皆「絶対誰にも言わない」のだと勝手に誓って帰っていくので、それを信じようと思った所も大きい。
実際その通りで、昼夜飛び交い続けるSNSには「Aに似た人がいた」と書かれる事はあっても、「Aに直接会ってきた」と語られる事は無かった。
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さっちゃん(プロフ) - 作品読ませていただきました。途中胸が苦しくなるほど、とても良い作品でハッピーエンドで終わり良かったです。またトキメキと良い意味での胸の苦しさを求めて何度も読もうと思います。素敵な作品をありがとうございます。 (9月26日 22時) (
レス) @page49 id: 585b81384e (このIDを非表示/違反報告)
ちるぬな(プロフ) - 初めてこの作品を読ませていただきました。言葉遣いからストーリー構成まで、ほんとうに好きです。素敵なお話ありがとうございます。これからまた何十回と読ませて頂きます^_^ (9月20日 21時) (レス) @page49 id: 7c0a70e250 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» 私こそすみません…！作品の方また楽しんでいただければ幸いです！ (2021年8月31日 11時) (レス) id: 9dd39ae13b (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - せのさん» そうだったんですね！失礼いたしました...！ (2021年8月30日 21時) (レス) id: ef764b671d (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» こちらこそ読んでくれてありがとうございます〜〜！！Twitterはしてないので教えられず……！ (2021年8月30日 16時) (レス) id: 01bd2f8507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せの
| 作成日時：2021年8月2日 0時
