夢 ページ2
マーク視点
「ある日」は唐突にやってくる
明日会いたいと思っていても
伝えたいことが山ほどあっても
それは何の前触れもなく、足音もなく
確かにやってくる
「あ、雪」
Aが窓ガラスの外を見ながらそう呟いた。
どこに雪なんてと思っていると、目をこらせばたしかに一つ、二つと雪が落ちてきて、視界にだんだんとモザイクを掛け始める。
窓の外の、一瞬にして白くなった地面を眺めながら、今日はこのまま積もってしまいそうだと思った。
暖房が焚かれ続けている会社の廊下はどちらかと言えば熱いくらいで、視界のずっと下に見える道行く人達は身を屈め、寒そうに足を速める。
「マーク、あそこ見て」
「どこ？」
「裏口の方。雪を食べようとしてるあの集団は……ほら、ヘチャン？」
「あー……」
「髪色から見てヘチャンとロンジュン、それから」
「チョンロとチソン」
「ジェノとジェミンはいないんだね」
「オレ達から見えない所にいるだけで、そこら辺にいそうだけど」
Aが窓を開ければ、質量を伴った冷たい空気が暑い廊下にぶわりと押し寄せてきた。
雪を乗せた風がオレ達に向かって舞い込んでくるから、後ろに流れて行ったAの髪にくっついた小さな結晶を摘み、指先で溶かす。
窓枠の棧に手を着いて、Aは弟達を微笑ましそうに見下ろしていた。
チョンロが目敏くオレ達に気付き手を振ると、それが連鎖して、ヘチャンだけは薄く積もり始めた雪をかき集めてオレ達に向かって投げつけてくる。
もちろん高い位置から見下ろしているオレたちに届くことはなくて、雪玉はそのまま地面に落っこちてぐしゃりと潰れてしまった。
それをくすくすと笑うAがもう一度手を振ると、案の定ジェノやジェミンも軒下から出てきて手を振り返す。
「知ってる、A？」
「なにを？」
「初雪を二人で見ると、恋人になれるんだって」
だいぶ昔にどこかで聞いた話を口に出すと、Aの笑みがピタッと止んで、次の瞬間にはくるりと怪訝そうなものに変える。
「またどうしてそんな……初雪の降ったタイミングで恐ろしい事を……」
「お、恐ろしいって……オレはただ、そういう話を思い出しただけで……だいたい根拠のある話でもないし」
「そうだけど、そういうのは他の女の子の前でやってもらえると……」
「い、いないから、そんな人」
.
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さっちゃん(プロフ) - 作品読ませていただきました。途中胸が苦しくなるほど、とても良い作品でハッピーエンドで終わり良かったです。またトキメキと良い意味での胸の苦しさを求めて何度も読もうと思います。素敵な作品をありがとうございます。 (9月26日 22時) (
レス) @page49 id: 585b81384e (このIDを非表示/違反報告)
ちるぬな(プロフ) - 初めてこの作品を読ませていただきました。言葉遣いからストーリー構成まで、ほんとうに好きです。素敵なお話ありがとうございます。これからまた何十回と読ませて頂きます^_^ (9月20日 21時) (レス) @page49 id: 7c0a70e250 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» 私こそすみません…！作品の方また楽しんでいただければ幸いです！ (2021年8月31日 11時) (レス) id: 9dd39ae13b (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - せのさん» そうだったんですね！失礼いたしました...！ (2021年8月30日 21時) (レス) id: ef764b671d (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» こちらこそ読んでくれてありがとうございます〜〜！！Twitterはしてないので教えられず……！ (2021年8月30日 16時) (レス) id: 01bd2f8507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せの
| 作成日時：2021年8月2日 0時
