ep8 ページ10
案内された広間に入れば、目の前にはズラリと野郎が並んでいて少し面喰らう。
「今日から真選組の補佐役として就任してもらう、橘A君だ」
「作戦立案、他組織との交渉、雑務諸々何でも承ります。どうも宜しくお願いします」
挨拶をすれば所々で隊士達がザワザワし始め、それが伝染して広間は無秩序になる。
その時、隊士達の声を代弁するかのように大柄なスキンヘッドの男が立ち上がった。
「近藤さん……補佐役って言えば聞こえはいいが、話を聞く限りそいつの仕事は参謀だ。伊東の時の二の舞になるだけじゃねぇか」
そう、私も話は聞いている。先日起きた元参謀、伊東鴨太郎による真選組転覆を狙った騒動を。
身内から謀反者が出るというのは組織にとっては並々ならぬ痛手だ。
しかし――……
「だからこその橘君だ」
局長がきっぱり言い切ると騒めきは瞬時に静まった。
「今まで俺達は真選組内部に目を向けてこなかった。それは身内だから大丈夫だろうと考えて来た俺の怠慢のせいでもある」
それに気付けているのなら怠慢じゃないと私は思うけど……。
「ここは一つ、完全な外部の目を入れることも重要だと考えた。それが俺の出した結論だ」
隊士達の表情を見れば、複雑な表情で肩を強張らせていた。
私はふぅ、と溜息を吐いて口を開く。
「別にいいですよ。無理に気遣わなくて」
「……どういう意味だ」
仁王立ちの男はその頭に青筋を浮かばせた。
「異分子を受け入れたくないという貴方達の気持ちもよく分かりますから。しかしこちらも雇われの身なんでね、作戦立案はさせてもらわないと。
……ああ、別に嫌なら従わなくていいですよ?それで犠牲者が出ても知りませんけど」
「貴様――ッ!」
「やめろ」
怒りに身を任せてドンと一歩踏み出したスキンヘッドを副長――土方十四郎が制した。
「これは局長の決めたことだ。文句があんなら局長に言え」
「――っ……」
副長の言葉にわなわなと震えた拳を抑えた男は仕方なく床に座り込んだ。
険悪な空気が辺りを包む。
紛れもない、私への疑念だ。
「……はっはっは……まぁ、むさ苦しい所だが宜しく頼むぞ、A君」
重い空気を振り払おうとした局長の台詞も重たく沈むだけ。私は早々に立ち上がって広間を出ることにした。
そして去り際にぽつりと呟く。
「問題ありません。むさ苦しい所は慣れてますから」
ピシャリと襖を閉めてその場を去った。
2858人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ギラッフェ(プロフ) - からちぇさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも応援お願いします! (2020年9月11日 22時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
からちぇ - ドストライクな作品でした!めちゃくちゃ好きです (2020年9月10日 19時) (レス) id: b750728265 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 今井月華さん» コメントありがとうございます!ちょっと気を抜くとすぐ体調崩しちゃいますからね、気をつけます。月華さんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ハニーさん» ご心配ありがとうございます!これからインフルエンザの季節ですし、ハニーさんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
今井月華(プロフ) - お疲れ様です。体調にはお気をつけ下さい^_^ (2018年11月2日 21時) (レス) id: 7d138352b8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ギラッフェ | 作成日時:2018年10月1日 22時