【銀魂】前職：攘夷四天王専属参謀

ep16 ページ18

静まり返った広間。


緊張というより茫然という言葉の似合う空気。そんな腑抜けた空気を吸って思いっきり吐き出す。



「……ったく、黙って見てりゃ――――……


……お前ら一体何に怯えてんの……？」


聞くまでもない。伊東鴨太郎による謀反は今も彼等の中に深い傷を残している。
彼等は恐れているのだ。再び局長を危険に晒すことを。再び仲間を失うことを。

その気持ちは分からなくはない。いや、痛いほど分かる。

だが、だからと言って彼等が腑抜けてていい理由にはならない。



「……死して尚化けて出る事なかれ。武士たるもの潔く成仏すべし」


聞き覚えのある局中法度に俯いてた隊士達が視線を上げる。

あー気に食わない。その腑抜けた顔。


「死んだ伊東が立派に成仏したってのに生きてるお前らは亡霊みたいにいつまでもグダグダグダグダ……」


そう、初めて隊士達の表情を見た時からずっと気に食わなかった。


死にゆく奴には悔いの無い死に舞台を用意して、満足に死なせてやるのに――

仲間のためならそこまでやってやる癖に――


自分の為なんて頭の片隅にも無い。それどころか、自分のことはいつまでも罪悪感の鎖で縛り続ける。

そんな馬鹿で不恰好なコイツらが私は最初から気に食わなかった。



「侍なら要らない障害物なんか薙ぎ払うくらいの力で足を進めるしかないだろ。
お前らのしょーもない罪悪感とか責任感とか伊東が全部あの世に持って行ったと思えばいいんだよ」


見れば隊士達は茫然としたまま床に座り込んでいた。



　



パンッ――……！


手を叩いた音に驚いて肩をびくりとさせる。


「ほら、分かったらサッサと行く！！」


その言葉で思い出したように出動の支度を始める。



「それと各隊隊長はこれを……」


キャリーケースからインカムを取り出して渡す。


「着けといて下さい。ここから三丁目の交差点まで、私が最短距離で誘導します」


「出来るのか、そんなこと」

「舐めてもらっちゃ困ります」


にやりと笑う私を見てインカムを耳に据えた隊長の面々。






「よし、では張り切って――――」


“――……暴れたれ、野郎共”


昔の口癖で言いそうになった言葉をグッと堪えた。
……困ったな。癖ってなかなか治らない。

思わず苦笑して私は言い直した。




「ではご武運を」



　

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