【刀剣乱舞】LOVE/LIKE/アイ？【短編集】 (ページ49)

今日:15 hit、昨日:21 hit、合計:19,702 hit

最終章・愛ページ49

長い長い話があった。男士は誰も口を開かなかった。審神者の生い立ちと運命の話だった。
Aが言い終わると、加州は我慢し切れないという様に立ち上がった。握った拳が小刻みに震えている。

加「そんな事言うな！主の馬鹿！」

周囲はハラハラと見守っていた。Aは俯いたままだ。

加「主は俺たちのこと愛してくれてたじゃん！帰って来たらおかえりって迎えてくれたし、怪我してたら心配してくれたし、それって愛してるって事じゃないの！？」

　「それは審神者として当然の事をしたまでで…」

蜂「本当に愛していなかったら、今回皆に話す事に胸を痛める事はなかったんじゃないかな。隠す必要もなかった」

側に座っていた蜂須賀が口を開いた。Aの事情を全て把握していたのは、この本丸では彼一人だけだった。そしてこの場を設けたのも、他の男士に真実を伝える事を勧めたのも彼だった。

蜂「誰よりも長く側にいた俺が言うんだから間違いない。主は俺達の事、愛しているよ」

夜、長谷部は縁側で主の事を考えていた。事実をまだ完全に受け止め切れていなかった。
頭を抱えている所に三日月が現れた。

長「お前、知っていたんだろう」

三「何の事だか…」

長「惚けるな」

長谷部は三日月を睨み付けた。嘘は通用しないぞとその目は言っていた。

長「あの日、主が風呂場で倒れていた時、お前は」

三「お前は主を愛しているのか」

突飛な事を言い出すので、長谷部は続きの言葉を引っ込めてしまった。そして返答を待たず、三日月はその場から消えてしまった。

三日月がその足で向かったのはAの居る離れだった。まだ寝る時間には早いだろうという予想通り、Aはまだ仕事の残りを片付けていた。本丸襲撃の後だというのに時の政府に休ませる気は無いらしい。

「どうした三日月」

審神者の右目には眼帯が付けられている。敵に潰されたという話だが、本人はあまり気にしていないと言う。「目が見えない事で見えてくる物もある筈だ」
しかし傷心しているのは誰の目からも明らかだった。怪我に加えて、誘拐による恐怖、刀剣破壊の心痛で精神は摩耗し切っている。

あぁなんと哀しい。そして美しい。

三日月はAの頬に触れた。そして右目をゆっくりなぞり、囁いた。

三「俺は主を愛しているぞ」

　「あ、あぁ…分かっている。私もだ」

今の主に俺の「愛」を受け止めるのはまだ早いらしい。ならばゆっくりと教え込み、主から俺を求め、俺に抱かれたいと思わせる様仕込むだけだ。
あの日見たAの裸体を思い出し、三日月は歓喜に震えた。