幕末・敵襲 ページ23
誰もいない池田屋はしんと静まりかえっていた。
遡行軍は何処だろうか。手分けして探す。
和「なあ、これ…」
和泉守が差し出したのは小さな金属片だった。
隣の部屋を探っていた加州が口を歪ませた。
加「あー多分それ俺」
池田屋事件で沖田総司は加州清光の切っ先を折っている。恐らくそれだろう。
陸「ちっくと待て。遡行軍ははやここにはいないんじゃあないがか?騒動は終わったっちゅう事じゃろう」
長「…伏せろ!」
ズドンと外から銃が打ち込まれた。敵刀装兵だ。
蜂の巣となった壁から月光が射し込む。照らされた室内には男も女も関係なく屍が転がっていた。夜目が効かないため、気付けなかった。
これは事件『後』だ。
池田屋事件で失敗した遡行軍は、このまま手ぶらで帰るより我々刀剣男士を待ち伏せして討ち取った方がましと判断したのだ。
まんまと引っかかった。
銃撃が収まった。陰から様子を伺う。
ヒュンッ、と何かが頰を掠めた。矢だ。
そうか、外に出れば遠戦出来る。
陸「おま…どういうつもりじゃ?!」
一歩外に踏み出した堀川を陸奥守が止める。
堀「離して下さい。弓兵でちょっとやっつけるだけです」
陸「この状況でか?無茶じゃ止めちょき。白刃戦で形勢逆転を待つ。隊長命令じゃ」
長「その作戦も無茶だと思うのはおれだけか?」
長曽根だ。元の持ち主の如くその表情は穏やかなままである。
長「敵は待ち構えて準備をしていたはずだ。そう簡単にやられる玉じゃない。ここで敵の意表を突いて飛び出した方が勝機はあると思うが?」
陸「長曽根は今回隊員やからそんな事が言えるんじゃ。わしは隊長として全員を生きて帰す必要がある。分かってくれ。今負けても次勝てばええ」
長「世界を掴む…か。坂本龍馬が今のお前を見たらどう思うか」
陸「じゃかましい!!おまんには分からんやろう。わしの、事は」
その後は続かなかった。
やはり気を使っているらしい。ここまでか、とAは無線に口を近付けた。
長「遠慮するな!」
耳が痛くなる声量だった。
長「おれはお前に遠慮せずおれの意見を言った。なのに何故お前はそんなに身を引く?お前も本当は負けたくないだろう?」
周りは静かに見守るしかない。
陸奥守はゆっくり口を開いた。
陸「当然じゃ。戦うなら勝ちたい。でもおんしらを危険な目に合わせる訳にゃいかん。特にここじゃ…」
長「じゃ、決まりだな。敵に突っ込む」
陸「やけど…」
長「全く。その気を使い過ぎる性格は誰に似たんだか。なあ主」
モニター前でギクッと肩を強張らせる。流石良く周りを見ている。
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いづみ(プロフ) - 餅田さん» コメントありがとうございます。がんばります! (2020年8月19日 14時) (レス) id: 28595e5e52 (このIDを非表示/違反報告)
餅田 - 続きカモン! (2020年8月1日 23時) (レス) id: b17d16c344 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いづみ | 作成日時:2019年2月28日 23時