【刀剣乱舞】LOVE/LIKE/アイ？【短編集】 (ページ14)

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写し・出会いページ14

「私はお前しか見ていない」

布に隠れた目を見詰めながら続ける。

　「お前と別の山姥切なんて見た事もない。私の中の山姥切長義の評価はお前で成されていて、素晴らしい物だと思っている」

山「あんたも本歌を見たら、写しになんて興味も失せるだろう」

　「それは分からない。少なくともお前を見ていると、本歌はきっと綺麗なのだろうと思う。そしてそう私が思えているのは、お前のお陰だ。お前がずっと一戦で戦ってきてくれたから」

山「…」

　「山姥切国広はあの山姥切長義の写しにして堀川国広の傑作と言われているのだろう?では＿＿お前が自分でどう思っているかは別にして＿＿世間の評価はかなりの物だろう。それに…出会った時の事を覚えているか?」

一気に畳み掛けたので、唇が痙攣する様に震えている。只、これだけは確認しておきたいと思っていた。

初期刀の蜂須賀虎徹と初短刀の前田藤四郎の次に現れたのが彼だった。初鍛刀だった。

彼は半日部屋から出て来なかった。
同じ理由だ。
俺は写しだから、どうせ直ぐに使われなくなる。そう言って誰も立ち入らせなかった。

仕方ないのでAは部屋の外、襖越しに呼び掛けた。

　「仕事をしてくれればそれでいい。私はそもそも刀剣男士に深く立ち入るつもりはない。お前が望むのなら、私から話し掛ける事もしない」

だから出てきてくれ、と淡々と語った。

彼は部屋から出た。少なくとも比べられる事はないと悟ったから。

そして今こそこの関係から一歩踏み出す時だ。

　「私はお前と良い関係を築けていると思っている。だから言う。私は本歌の山姥切が見たい。お前程の傑作が引け目を感じる様な刀剣をこの目で見たい。勿論お前が嫌なら、別にいいのだが」

まだ目線は逸れない。想像以上の目力に少々たじろぐ。そういえば、こうして面と向かって話すのは初めてか。長い付き合いにもなるのに。

ふと、目線が逸れた。

　「まぁ、何が言いたいかと言うと…まんば、とお前の事を呼ぶようになる訳だ。宜しく頼む」

いまいち何に対しての宜しくなのか分からぬまま、そそくさとAは本丸に帰ってしまった。

山姥切国広は一人ポカンと畑に佇んだ。

何が言いたかったのか微妙に分からないが、Aの無駄に真面目というか正直な所が彼は好きだった。Aは嘘は吐かない。
だから本歌が来ても、なんとかなる様な気がしていた。