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外の世界 ページ10

すっかり冷えた空気の中、電気も付けずに窓の外だけをじっと見る。
開け放たれた窓からは刺す様な風が吹き付けられていた。
それに合わせて自分の髪が靡くのを、ただひたすらに楽しむ。
これなら外に行かなくても、外の空気を直接浴びる事が出来る。

ドアの音がして、誰かに後ろから抱き締められる。
「どうしたの。
まさか、変な事考えてない?」
「…考えてないよ。風が気持ち良いなって思ってただけ。」
この空間に足りなかった温もり。
その持ち主であるひなちゃんの手に自分の手を重ねる。
「良かった。凜は危ない所あるから。
寒いから窓閉めよっか。」
そう彼女に言われ、窓を閉めて電気を付ける。
ベッドの上に隣同士で座り、膝の上で彼女と手を絡ませ合った。
「風浴びてただけ?景色は見なかったの?」
「うん。だって外は怖いだけなんだもん。」
風を浴びているだけなら、人の目を気にしなくて良い。
そう続けると、彼女は繋いでいない手を
私の手の甲の上に重ねてそっと撫で始めた。
「ねえ。この前は近場を歩いたから、
今度はバスにでも乗ってみない?」
「え…、遠くなっちゃうの…!?」
「ダメかな。二人でデートらしいデートをしたいの。
馴染みの喫茶店とか、良く行ってる本屋さんとか。
色んな所を凜に教えてあげたいの。」
「……私も…。」
「え?」
「わっ、私も…、出られるなら出たいよ…!」
俯いて、声を震わせながら言う。
「でも怖いの…!誰に会うか分かんないし、
何を言われるかも分かんないし…!
一緒にいるひなちゃんにまで何か言われるかも知れないもん…!」
反射的に溢れ出した本心。
それを黙って聞いていた彼女が、やがて口を開いた。

「…私は別に、何言われても良いよ。
凜が何か言われる位なら、私が凜の分まで受け止める。」
「そんな事したら…、ひなちゃんが壊れちゃう…!」
「私は平気だよ。心は頑丈だから壊れない。
でももしそうなったら、凜が私を起こしてよ。」
「…ほっぺた、むにむにしたら良い?」
「引っ叩いた方が良いかもね。」
「やだ…、ひなちゃん引っ叩くのやだ…!」
ふふ、と笑いながら冗談だと返す彼女。
顔を少しだけ上げ、目線だけを彼女に向ける。
「やっぱり泣いてた。もっとくっついてよ。」
言われた通りにすれば、強く抱き締められて深く口付けられる。
私は目を閉じて、ただそれに応えた。

憧れは確かにある。でもやはり怖い。
その二つの思いを理解し、一緒にいてくれる彼女。
いつかは、二人で遠くに行けると良いなぁ。

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設定タグ:百合 , 短編 , オリジナル   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年12月7日 19時

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