「凜」と「ひなちゃん」 ページ43
「…私、ひなたちゃんの事が好きみたい。」
中三の時のある日曜日。
私が彼氏と別れた話をした暫く後に、彼女がそう言ってきた。
「私も凜ちゃんの事好きだよ。」
話の流れから、そんな意味で言った訳じゃない
と言う事は私も分かっている。
「違うの。ひなたちゃんと私の好きは、絶対同じ意味じゃないの…。」
彼女の部屋が、微妙な雰囲気に包まれた。
「ひなたちゃんが彼氏さんと別れたって言った時に、
私の所に戻ってきてくれた、みたいに思ったの。
最低だよね。友達が好きな人と別れたのを嬉しがっちゃったんだもん。
それに…変だよね。ひなたちゃんも私も女の子なのに、
友達として見れなくなっちゃうのが怖いの。」
途中から目に涙を浮かべて話す彼女を見て、眼鏡をそっと外してあげる。
眼鏡を机に置くと、彼女を抱き寄せて私の胸元にその顔を寄せた。
左手で頭を撫でながら、こう声を掛ける。
「…ごめんね、ずっと一緒にいたのに気付いてあげられなくて。
話してくれてありがとう。辛かったよね。」
泣き出した彼女を抱く力を、少しだけ強める。
「まだ女の子に好かれてるって気持ちは分かんないけど、
私も応えられる様にするからね。」
「…付き合って欲しい訳じゃないの。せめて、友達でいて欲しくて…。」
その日中はずっと、泣き続ける彼女をただ受け止めていた。
そんな日が来るのがこんなに早いとは思わなかった。
次の日、いつも通り学校で一緒に過ごしていると。
「ひなたちゃん、手繋ご。」
「え、うん…。良いよ。」
「どうしたの?」
「…何でも無いよ。」
手なんて、小さい時から繋いでいたのに。
彼女の気持ちを聞いたからか、少し躊躇う様になってしまった。
いや、躊躇うと言うよりは。
「ひなたちゃん、顔赤いね。」
「…赤くないよ。」
「ふふ、赤くなってるよ。」
確実に彼女にときめいている。
あれ、凜ちゃんってこんなに可愛かったっけ…?
確かに元から美人だけど、可愛く見えたのはこれが初めてだ。
「ねえ、そろそろ別のあだ名で呼んでみない?」
「別の…?」
「うん。凜ちゃんの本当の気持ちが知れたから、
もっと仲良くなりたくて。
でね、私は凜って呼びたいの。
呼び捨ての方が可愛く聞こえるし。」
「…良いよ。じゃあ私はひなちゃんって呼ぶ。
こっちの方が可愛いもん。」
「良いよ。でもちょっと擽ったいね。」
「うん、何か変な感じする。…ふふ。」
彼女の想いを直接聞けて、更に絆は深まった。
私がその想いに応えられる日は、そう遠くないのかも。
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