【オリジナル】Milky Princess -彼女達の甘い秘め事-【GL/短編】 (ページ40)

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[いい夫婦の日企画]十年後の二人ページ40

ドアの開閉音に、微かな足音が続く。
同時に冷たい空気が、私達のマンションの部屋に入ってきた。
「ただいま。」
「おかえりなさい。今日は早かったんだね。」
「早く凜に会いたかったからね。」
荷物を降ろしながら、彼女が言う。
「ひなちゃん、週末は遅くなる事が多いから珍しいな。」
「私達が初めて迎える結婚記念日だよ。
そんな特別な日に遅れたくないよ。」
彼女の言葉に、頬を赤らめる。
少し遅れて、慌てて荷物を手に取った。

私の家から持ち出したベッドに、二人で縺れ合う様に倒れ込む。
「…せ、せめて着替えてよ。
ひなちゃんのスーツに皺が出来ちゃう。」
「じゃあ脱がせて。」
「もぅ、子どもじゃないんだから。」
私がこの台詞を言う日が来るとは思わなかった。
彼女のスーツのボタンを開け、順番に広げていく。
敢えてたわわなそれを見ない様にして、全てを脱がせた。
「凜はお風呂まだ？」
「まだ入ってないよ。」
「良かった。一緒に入ろうよ。」
「…ご飯の後でね。」
彼女が着替えている間に、ご飯の準備をする。
テーブルに全て置くと、彼女も着替えを終えた様だ。
椅子を引いて座ると、彼女が大きな袋から一つの瓶を取り出す。
「シャンパン？」
「うん。ノンアルコールの物が出てたから、
二人で飲みたいなって思って。」
お酒が好きな筈なのに、私に合わせてくれたんだ。
「…嬉しい。」
「ふふ、早速飲もうよ。」
二人で食べた今日の夕飯はいつもと
変わらない筈なのに、どこか特別なものに思えた。

ご飯とお風呂の後で二人で寛いでいると、急に彼女がこう訊いてきた。
「教会か神社ならどっちが好き？」
「え…？えっと、教会かな。
神社は格好良いけど、教会は綺麗なイメージがあるし。」
「じゃあ、ドレスと着物ならどっち？」
「ドレス…かな。」
「そっか、確かに凜に似合うかも。
ねえ凜…、二人でウエディングドレス着よっか。」
その瞬間、私の心がどきりと鳴った。
「…無理だよ。受け入れてくれる所なんて無いし。」
「調べたら同性も受け付ける所があったの。
私達も式が挙げられるんだよ。
親も友達もきっと来てくれる。
だから、私は凜と式を挙げたいの。」
不意に流れ出す涙と共にこくりと頷く。
彼女がそっと、私を抱き寄せてくれた。

「ひなちゃん、こんな不束者を好きになってくれてありがとう。」
「私も、結婚してくれてありがとね。
愛してるよ、凜。」
出逢ってから一番近い位置でお互いを見てきた。
ひなちゃん、これからもずっと一緒にいてね。