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外出記念日 ページ4

少しでも、外の空気に慣れて欲しいから。

凜に濃いメイクは似合わない。
元々が整っている為、盛っても意味が無いからだ。
「…はい、出来たよ。」
「…ひなちゃんって、お化粧上手だね。」
「そろそろ自信持とっか。
ナチュラルだけでここまで綺麗になる女の子は中々いないよ。
ねえ、せっかくメイクしたんだから外に出てみない?」
彼女にとっては高いハードルである事は重々承知だ。でも。
「少しの間だけで良いから、凜と歩いてみたいの。」
「やっぱり、怖いよ。」
渋る彼女の顎をそっと持ち上げ、軽く口付ける。
「…っ。もし本当に怖くなったら言って。
すぐにここに戻って来れる様にするから。
戻って来たらキスの続きしよ。」
そう諭すと、彼女はやっと首を縦に振ってくれた。

この時期は昼でもイルミネーションが点灯している。
「ひなちゃん。手、繋いでてね。」
「分かってる。離さないよ。」
指を絡ませ合って繋ぎ、彼女を落ち着かせる。
何があっても私が凜を守るからね。
コートのポケットに繋いだ手を入れる。
「ほら、これで離れないでしょ?」
「うん…。暖かい。」
掌にぎゅっと力が込められた。
「まだ怖い?」
「…大丈夫。ひなちゃんが一緒だもん。」
彼女に頼られているのをその可愛い一言で
感じ、こちらも握る手に力を加える。
「我慢しないでね。いつでも良いから辛くなったらすぐに言って。」
「…ありがと。」
ほんの少しだけ、彼女の頬が緩んだ。
彼女が自分の繋いでいない手を、
繋いでいる方の私の腕に絡めてくっついてきた。
「…落ち着く。」
「手を繋ぐより暖かいね。」
「うん、ひなちゃん暖かい…。ふふ。」
どうやら緊張が解けてきた様だ。

すぐにでも戻れる様に出来るだけ近い所を選んで歩く。
大通りに差し掛かった所で、雨が急に大きな音を立てて降り出した。
私達は近くのお店の屋根の下に駆け込む。
「天気予報では雨降らないって言ってたのにな。
…凜?」
彼女は何故か下を向いていた。その体も少し震えている。
「やだ…、見ちゃやだ…。」
「どうしたの?」
「せっかくひなちゃんにお化粧して貰ったのに、崩れちゃったの…。」
「そんな事か。ちょっと見せて。」
嫌がる彼女を抱き止め、顔を上げさせる。
「崩れてないよ。可愛いまま。」
「本当…?」
「本当。」
良かった、と漏らす彼女の頭を撫で、額同士を重ねた。

短い距離だけど、ここまで歩いていけた彼女にご褒美の口付けを。
今日はとても大切な日。
彼女が道を思い出した、大切な記念日。

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設定タグ:百合 , 短編 , オリジナル   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年12月7日 19時

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