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告白は月の下で ページ21

気持ちを聞いてから少し経った頃に、それは大きく変わった。
中学三年の頃に行われた臨海学校での夜。
眠れなかった私は、同室の凜が眠っているのを確認してから外に出た。
歩く度にさくさくと鳴る砂の音と波の音だけが、
ごく静かに辺りに響いている。
他に生徒はおらず、それだけが音を立てていた。

彼女の私に対する想いを聞いてから、私も胸が苦しくなっていた。
好みの男の子を好きになった時と全く同じ感覚。
今まで親友としか思っていなかった彼女を妙な目で見てしまう。
灯台が一番明るく照らしている所で足を止め、その場に座る。
見上げると、曇りの無い透き通った闇の中で
月が大きく顔を覗かせていた。
皆がスーパームーンだと騒いでいたけど、
一人で見てその凄さに改めて圧倒される。
「凜…。」
呟いた後に、誰かがこちらを見ているのが分かった。
凜だ。
駆け足でこちらに来るが、砂に足をとられて
私に向かって倒れてきてしまう。
「きゃっ…!」
「…もう。急いで来なくても逃げないよ。」
「ごめんなさい…。」
消えそうな声で謝る彼女を隣に座らせ、話をする。
「トイレに向かった帰りにひなちゃんを見掛けて、
どこに行くか気になって跡を付けちゃったの。」
「そっか。眠れなくて暇だったから海見てただけだよ。」
「邪魔、しちゃったよね…。」
「邪魔じゃないよ。
海、キラキラしてるね。」
「うん、綺麗…。
ひなちゃん。海が綺麗なのはね、お月様が照らしてるからなんだよ。
太陽よりも綺麗に照らしてくれるの。」
彼女の詩的な説明に、なるほどと頷く。
「私、ひなちゃんと一緒にお月様が見れて良かったって思ってる。
あんなに大きくて綺麗なお月様、滅多に見られないもん。」
「私も、そう思うよ。」
「…ひなちゃん、急にあんな事言ってごめんね。
気持ち悪かった、よね…。」
「そんな事思わないよ。凜の正直な気持ちを聞けて嬉しかったし。
私にはまだ良く分かんないけど、
私も凜の事を好きになれるかも知れない。だから。」
波が引いたと同時に、その言葉を告げる。
「私達、付き合おっか。」
軽く聞こえるが、私は本気だ。
「本当に言ってるの…?」
「本当だよ。」
長く思える沈黙の後、彼女が応えてくれた。
「……ひなちゃんが良いなら、お願いします。」
小さく震える肩に触れ、そろそろ行こっかと声を掛ける。
寒くなってきたから、と繋いだ手が、
私の想いを確かに大きく変えた。

今でも満月を見る度に思い出す。
何物にも代え難い、私達だけの秘密の想い。

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設定タグ:百合 , 短編 , オリジナル   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年12月7日 19時

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