<初めて>を感じて 後編 ページ17
凜が引きこもりである事は、前にさやかさんには言っていた。
なのに、彼女にこんな思いをさせてしまうなんて。
「…ティラミス、食べなくて良いの?」
「食べるよ。でも、今はこうしてたいの。」
初めての遠方デートとしては最適だと思っていたけど、失敗だったかな。
「ごめんね、ひなちゃん。楽しくないよね。」
「そんな事無いよ。一緒に楽しくしていけば良いしね。」
とは言うけれど、彼女の顔を見て唇を噛み締める。
「さっきはごめんね。こちら、サービスの苺パフェです。」
さやかさんが普通より少し大きいサイズのパフェを一つ持ってきてくれた。
「凄い量…。食べられるかな…?」
「二人で食べようよ。
これ、さやかさんが作ったんですか?」
「そうだよ。お詫びにならないかも知れないけどね。」
いただきますの後に、パフェにスプーンを沈める。
掬い上げた物を、凜の口元に持っていった。
「あーん、して。」
「…一人で、食べられるもん。」
「凜ちゃん。
あたしもひなたちゃんも、凜ちゃんに謝りたいんだ。
ひなたちゃんのパフェ、食べてやってよ。」
さやかさんの言葉に、おずおずと口を開けて応える凜。
はむっ。
「……美味しい。」
「良かった。
食べながらで良いから、あたしの話を聞いてくれるかい。
実を言うとね、あたしも凜ちゃんみたいな子だったんだ。
どんな事も内に抱え込んで。
ひなたちゃんみたいな良い子が周りに
いなかったから、ずっと一人だったのさ。
だから、凜ちゃんには寂しい思いをさせたくなかったんだよ。
こんな事、言い訳にすらならないけどね。」
凜に昔の自分を重ねていたらしく、
彼女に対して優しく語り掛けるさやかさん。
「凜、泣きそうになってる。」
「今は泣かせてあげなよ。
凜ちゃん、いっぱい泣いたら同じ分ひなたちゃんに笑ってあげて。
向こうの個室を使いなよ。荷物とケーキはあたしが持ってくるからね。」
そう言われて、空いている個室に彼女を連れて行く。
二人きりになると、彼女が堰を切った様に泣き出した。
暫く経ってから個室を出る。
「もう帰るのかい?」
「はい。お会計お願いします。」
会計を済ませ、さやかさんと少し話す。
「また来てね。」
「あの…、さやかさんと話すの、楽しかったです。」
「凜、行こっか。また来ますね。」
彼女の手をしっかり握り、二人でお店を出た。
出来る事が少ない彼女の助けになれたのかな。
微かな後悔は残るが、彼女が楽しいと言ってくれたのなら。
戻った笑顔を見て、私も微笑み返した。
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