<初めて>を感じて 前編 ページ16
ひなちゃんに連れ出され、少し遠くの市街地を歩く。
外に出てからは怖かったけど、ひなちゃんがずっと
手を繋いでいてくれているから何とか安心出来た。
くっついて歩いている内に、目的地に着いた様だ。
明るい雰囲気の喫茶店。
テーブルに案内され、向かい合わせに座る。
「雰囲気良いでしょ?
私のお気に入りなんだ。」
「…あ、うん…。」
「緊張しなくて良いの。皆良い人だからね。」
話している内に、一人の店員さんが間に入ってきた。
「いらっしゃい、ひなたちゃん。
この子が例の?」
「はい。
私の彼女の凜です。
凜、この人はさやかさん。格好良い人でしょ?」
彼女が親しく話している<さやかさん>は、
ベリーショートが良く似合う長身の美人さんだった。
「ひなたちゃんから話は聞いてるよ。
ずっと君の話ばっかりしてるからね。
先に注文聞いて良いかい?」
「あ、はい。」
注文を済ませて目線を上げると、ひなちゃんが優しげに微笑んでいた。
手を出す様に言われて両手をテーブルの上に置くと、
そのままそっと握ってくる。
「まだ怖い?」
「…うん。」
「でも、誰も何も言って来ないでしょ?
ここはね、私達と同じ様な人達が集まる所なの。」
「同じ…?」
「レズビアン喫茶って聞いた事ある?
昔は多かったみたいなんだけど、今はここ位しか無いんだって。」
「お待たせしました、ミルフィーユとティラミス。
ストロベリーミルクとホットココアです。」
先程のさやかさんが、注文していた物をテーブルに並べてくれた。
「…こう言うお店って、もっと暗い雰囲気なのかと思ってた。」
「はは、まあ暗いイメージはあるだろうね。
でもそれだとお客様が来てくれないじゃん?」
私の言葉に、軽く笑いながら返してくるさやかさん。
「にしても本当に綺麗な顔してるね。
ひなたちゃんが自慢するだけあるよ。」
「さやかさんは彼女さんと会えてるんですか?」
「会えてないけど連絡は取り合ってるよ。」
二人が楽しそうに話しているのを、
私はミルフィーユを食べつつ聞こえないふりをする。
「凜、具合悪い?」
「おっと、長居し過ぎたね。
お邪魔虫は消えますから、ごゆっくりどうぞ。」
それぞれ雰囲気を察したのか、さやかさんが
奥に行ってひなちゃんが私の隣に座る。
「ごめん、一人ぼっちにさせちゃったね。」
「…ひなちゃんは、悪くないもん。
場違いな私が悪いんだもん。」
「場違いなんかじゃないよ。」
彼女が私の頭を撫でてから抱き寄せてくる。
私はそれに、ただ身を預けた。
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