特別な想い、唯一の絆。 ページ15
お風呂を借りて部屋に戻ると、凜がいない。
いや、実際にはちゃんといる。
彼女は自分のベッドの上に、掛け布団に包まって震えていた。
「ばあ。」
「……。」
「また泣いてた。今度はどうしたの。」
布団を捲り上げ、声を殺して泣く彼女に話し掛ける。
「…ごめんね。
ひなちゃんの携帯、いっぱい鳴ってたからちょっとだけ見ちゃったの。」
「泣いてる理由ってそれ?」
彼女は首を小刻みに横に振り、言葉を続ける。
「それで、色んな人の名前がいっぱい出ててね、
それを見てたら、泣きたくなっちゃったの。
私の知らない名前ばっかりで、
置いてきぼりになっちゃったみたいに感じて…。」
…成る程ね。
「私も、そっち行って良い?」
こくりと頷く彼女を見てから、ベッドに潜り込む。
特有の冷たさは失われ、彼女の温もりをダイレクトに感じる。
まだ泣き続けている彼女の前髪を片手でそっと上げ、
あらわになった額にキスを落とす。
「ひなちゃん…。」
「スマホ見た事は怒ってないよ。
むしろちょっと嬉しかったし。」
「うれしい…?」
「うん。だって自分の彼女にスマホ見られるのって、
付き合ってるって感じするから。」
冗談っぽく言ってみるが、涙に濡れた瞳は変わらない。
「…まあ、確かに私は友達は多い方だと思うよ。
学校だけじゃなくてバイト先にも知り合いはいるしね。
でも、一番は凜だよ。」
私の中でかけがえの無い存在である凜。
そんな彼女を支えてあげる為に、私は彼女と共にいる。
だからこそ、こう紡ぐ。
「一番の仲良しで、一番大好きな人。
それに、私達がずっと一緒なのは変わらないでしょ?」
濡れている目元をそっと指で拭い、額同士を重ね合わせる。
小さい時から、彼女が泣いている時にやっているおまじないだ。
「…ほら、泣き止んだ。」
「…ひなちゃん、優しいね。
こんな私と、一緒にいてくれるんだもん。」
「私は凜が好きなだけだよ。
凜だって私と一緒にいてくれるじゃない。」
「……わ、私も、ひなちゃんが好きなだけだもん。」
信頼だけでは無い、確かな絆。
親友から恋人に変わった今なら、それが良く分かる。
「悲しいの、どっか行った?」
「どっか行った、かも。
ありがと。ひなちゃんのおかげだよ。」
呟く様なお礼を聞き、そっと彼女の体を抱き寄せる。
ふふ、と言う声が、私の胸からくぐもって聞こえた。
凜に必要なのは、心のケアと無償の愛。
私は凜の為に彼女を癒し、愛し続ける。
それが、ずっと隣にいた私が出来る事。
私にしか、出来ない事。
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