92ねむ ページ43
「っ、ごほっ……!」
マーメイドがすぐさま私の体を拾い持ち上げてくれる。彼女に手伝ってもらって泳いで反対側まで渡り事なきを得た。
地上に上がって、何とか服やウィッグの水分を搾り落そうとするが、うまくはいかないようだ。ぐっしょりと濡れたそれらは、重りとなって私の体にのしかかる。
「ありがとうね、マーメイド!」
ふわりとほほ笑んだマーメイドは私に小さく手を振ってから、水の中に戻り消える。
随分遅れてしまった。一位だったのに、今は……五位くらいか?
現在一番先頭で走っているメイド服のチワワが、私を振り向いてはチッと小さく舌打ちをした。なるほどあいつか。
「……」
少しだけチリ、とした怒りを覚えたが、まぁこんなところで反撃をするほど大人げなくはない。
それに今私はチームを背負っているのだから。いかんせん勝負事は大好きなので、赤組を頑張って勝利に導いていきたい。
次はハードル跳び。
ちょろいな、と言いたいところだが……私は今なかなかに短くて深いスリットが入ったスカートを穿いている。あんまり足をおっぴろげて跳びたくはないよねぇ……。
「ま、しょうがないか」
ひょい、となるべく足を広げない形でまずは手前のハードルを飛ぶ。
どうでもいいけど魔法使用がおっけいなら、空飛ぶ系の召喚獣呼び出して上に乗って一周するのはありなのかな。ダメ?ですよねー。
どんどん高さの上がっていくハードルが地味にきつい。隣のチワワが転んでしまって、ひゃあ!なんて悲鳴をあげてる。おま、その悲鳴は反則だろくそかわ!!
だが私は善人なので、「大丈夫かー」と声をかけておく。
「うっ、いたぁい……膝すりむいちゃった」
涙目になっている彼に思わず苦笑する。
参ったな、ただでさえペースダウンしているのに。
おっぴろげないと跳べなそうな高いハードルを前に、私は膝をつき地面に円を描く。
「マーメイド、彼の傷を癒してあげて!」
その声とともに、背後のプールからざぱりと先ほどのマーメイドが姿を現す。
優雅に私の隣に着地をして見せたマーメイドは、彼の膝を覗き込む。びくりとその体を震わせたチワワに「大丈夫」と声をかけるが、緊張は解けない様子で。まぁそうだよな。
やがてマーメイドは一粒の涙をこぼし、その涙がぽたりと彼の膝の傷口に落とされた。するとみるみる彼の傷が塞がっていく。
「う、わぁ……!」
「ありがとう、ごめんなマーメイド。何度も呼び出して」
マーメイドはにこり、と微笑みを返して消えた。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - アスヤさん» 最初から見ていただいて感激です……エド君ストライクと言っていただけで嬉しいです!これからもアスヤさんをきゅんきゅんさせられるような小説を書けるよう頑張らせていただきますね!コメント本当にありがとうございました! (2019年8月4日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
アスヤ(プロフ) - 作品最初から見ましたがエドくん好きです!どストライクです!更新無理せず頑張ってください! (2019年6月4日 22時) (レス) id: 85154871a9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 歩美さん» 大好きといっていただけで光栄の極みです!地毛がそっくりですと!さぞ美しい髪をされているのでしょうね。頑張らせていただきます、ありがとうございます! (2019年5月14日 13時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
歩美(プロフ) - 初めまして!シリーズを最初から読ませていただいています!!とても面白いのに、キュン要素をしっかり取り入れてもう大好きです。主人公の地毛が私にそっくりで感動しております。更新頑張ってください! (2019年5月13日 17時) (レス) id: 45ec4d7ed1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 礼羅さん» あー泣かれないで!つティッシュ 書籍化……できたらいいですね!(無理)ありがとうございますお気持ちとてもうれしいです!エド!これからも絡ませていくしかない!亀更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2019年2月5日 22時) (レス) id: 30865517cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:始まりの神 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年8月8日 12時