【逆ハー注意】男装腐女子の魔法科男子校潜入記【2】

89ねむ ページ40

「次お前だろ、障害物」
「へ」

エドに言われて気づいた。もう私の出番か。っていうか結局テントに戻る暇もなかった。
はー、憂鬱。結局障害物競走で何が起きるのか誰にも聞けずじまいだし。自分で避けた節もあるけど。だって怖くない？でも聞いとけばよかった。聞くは一時の恐怖、聞かぬは一生の恐怖っていうよね。言わないわ。

グラウンドに着くと、沢山のチワワであふれかえっていた。あれ、私めっちゃ目立つくね？

「ホノホノー！」
「こっち見てー！」

白組のテントのほうから聞きなれた声がして、顔を上げてみればやはり双子。しかもハンディカメラを持っているではないか。
思わず多少ひきつってしまった笑顔をそのままに、とりあえず私は手を振る。

「A・ホノカさん、第一走者です。4番のボックスにお入りください」

顔の知らぬ先生にそういわれて、私は指さされた先を見た。
ランニングコースのスタート地点少し手前に、1から10と示された人一人が入ってちょうどな感じのボックスがある。あれは簡易更衣室だろうか？
とりあえず言われた通りに4番のボックスへと歩み、扉を開いて中へ入る。
入る前に「そんな図体で障害物競走を選ぶだなんて、卑しい」という嫌味が飛んできた。

それがどういう意味なのか、部屋に入ってからようやくうっすら理解した。

「こちらにお着換えください、って、これ？」

張り紙に大きくプリントされた文字を再三読み直してから、おそらく衣装であるそれを手に取る。
どこからどのアングルからどう目を細めて見ても、これはチャイナドレス。しかも女物。
薄桃色の生地に、白と金の糸で綺麗な胡蝶蘭の刺繍が施されている。ふちは濃いめの桃色で、かなりショートな上に左足に大きくスリットが入って……これパンツ見えないよね？
しっかり下着からパットからウィッグまで用意されている。これは完全なる女装リレー。

すべての謎は解けた。
だからみんな、私を憐れむような目で見たのか。
いや確かにこれは私がやるべき競技じゃない。私がやってもおいしくない。ウッ観客席でこれを見たかった。

だがまぁ、女装なら得意だ。あるべき姿だからね、私の。
ただウィッグの上にウィッグとかいう二重ウィッグはだるいから、地毛の上に指定されたウィッグをかぶろう。すでにお団子に結われたウィッグを崩さないようにかぶって、衣装を身に着け、ヒールパンプスを履く。この間5分程度。いや任せろって女装なら女性に。

鏡にはもちろん完全な女性が映ってた。

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