88ねむ ページ39
格好いい。
吹いてきた風になびかれる会長の濡れ羽色の黒髪と、馬の白銀のたてがみ。
今日初めて乗る馬らしいが、まるで幼少のころから絆を深めてきたのではないかというほど一体感がある。なんだ、このピッタリ感は。
「会長、強いの?」
「当たり前だろ、この学園の教師を除いた全校生徒のトップだぞ」
生徒会に選ばれるためには顔面偏差値だけでは足りない。それに見合う実力も備わっていなければならない。
わかっているつもりだけど、いつも憎まれ口しか叩かれていないせいで馬から落ちろとか思ってしまうのだ。
テントに戻る途中ではあるが、見晴らしがいいので私とエドは階段の手すりに寄りかかって観戦をつづけた。
そうこうしているうちに、開始の合図がかかる。
「そっか、会長のジョブって、」
「あぁ、暗黒騎士だ」
エドが肯定すると同時に、会長は天高くその手を挙げる。開かれた手のひらを中心にどこからともなく闇が集まってくる。その闇の黒さは、さんさんと照らしているはずの太陽を余裕で飲み込めそうなほど深く、濃い黒だ。
見る間に闇は細長い形状を成し、やがては暗闇から生まれたかのように一本の剣が現れた。
次の一瞬、
「っ、」
ひゅ、と息をのむが早いか。
言葉が口から洩れる隙間もない間に、競技は終了した。ピピーッと何も驚いていないらしい進行役が指笛を吹いて、何の反則も含まれない圧倒的勝利を告げた。
一瞬。一閃。
会長が振り下ろした剣からあふれ出た暗闇は、波動となって周りにいた生徒に襲い掛かる。
少しでも闇に触れてしまった生徒は一瞬で気を失い、馬から落ちてしまったのだ。あまりに急なことだったので防御をする暇もなかったのだろう、無防備に暗闇にさらされた競技の参加者、全員が地面に崩れ落ちている。
あわてて救護班であるヒーラージョブの生徒たちが駆けよる。その中にユーリとカイの姿を見つけた。二人とも私に気づいたようで大きく手を振られたので、私もぎこちなく手を振り返す。いまだに現実とは受け入れられないが、つまりそういうことなのだろう。
実際に起きたことであると受け入れられないほどの圧倒的な力量の差。
「……会長つよぉ……」
「チッ」
負けず嫌いのエドは悔しげに舌打ちをする。
いやはやよく挑もうと思えるよね。私は正面から対峙するのももう無理。食堂のあの一件は絶対にもう二度と起こらないと思う。
え、あの人とこのあとバトロワするの?
控えめに言って無理なんだが。逃げたい。だるい。ねむ。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - アスヤさん» 最初から見ていただいて感激です……エド君ストライクと言っていただけで嬉しいです!これからもアスヤさんをきゅんきゅんさせられるような小説を書けるよう頑張らせていただきますね!コメント本当にありがとうございました! (2019年8月4日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
アスヤ(プロフ) - 作品最初から見ましたがエドくん好きです!どストライクです!更新無理せず頑張ってください! (2019年6月4日 22時) (レス) id: 85154871a9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 歩美さん» 大好きといっていただけで光栄の極みです!地毛がそっくりですと!さぞ美しい髪をされているのでしょうね。頑張らせていただきます、ありがとうございます! (2019年5月14日 13時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
歩美(プロフ) - 初めまして!シリーズを最初から読ませていただいています!!とても面白いのに、キュン要素をしっかり取り入れてもう大好きです。主人公の地毛が私にそっくりで感動しております。更新頑張ってください! (2019年5月13日 17時) (レス) id: 45ec4d7ed1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 礼羅さん» あー泣かれないで!つティッシュ 書籍化……できたらいいですね!(無理)ありがとうございますお気持ちとてもうれしいです!エド!これからも絡ませていくしかない!亀更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2019年2月5日 22時) (レス) id: 30865517cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:始まりの神 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年8月8日 12時