【逆ハー注意】男装腐女子の魔法科男子校潜入記【2】

87ねむ ページ38

呆れたように言うエドは、だがまんざらでもなさそうで私の髪の毛をくしゃりと撫でる。
ちょっと自分のカツラがずれないか心配になったが、しっかりピンでとめているので大丈夫だろう。泣いてるのにそんな心配をしているあたり絶対ぼろを出すことはなさそうだな。

「だって、嬉しい！ ありがと、エドぉ……！」
「……うっせぇ」

涙で滲んだ視界で見上げれば、エドの顔は真っ赤になっていた。
そんなエドが可愛くて、ふ、と笑ってしまう。目を瞑った拍子にこぼれ落ちた涙はそのまま顎を伝って地面に落ちていった。

「そ、それでは結果発表です！ 一位、白組！ 二位赤組、続きまして三位青組となっております！」

司会進行が流れを取り戻そうとマイクを握ったので、私たちは自分のテントに戻ることにした。
もう涙は止まったが、少ししゃっくりが続いていて時折息が苦しい。そのたびに心配そうに振り向いてくれるエドが優しくて嬉しくて、彼の服の袖をぎゅっと握った。

「さて、現在青組が最下位となっておりますが……がっかりするのはまだ早い！ 次の競技、目玉はこの方！ 我ら桜閃学園が誇る生徒会長、ヴィルフリート・アルトナー様！！」

会場全体に響き渡るマイクの音に呼応するかのように、声援が一気に爆発しては広がる。
驚きにしゃっくりも引っ込んでしまい、私はあわててグラウンドのほうを見た。確かに、生徒会長がグラウンドの中央に立っているではないか。ダルそうな顔を隠しもせず、だが悠々と立つその姿は格好いい以外の何物でもない。
本当私に向けられてない俺様って最高だよね。

「続きましては騎馬戦です！ 続々と選手が集まっていますが、顔色悪い人たちが大半ですね！」

それは嬉々として放送する内容なのだろうか。

エドがまたテントに向かって歩み始めたので、それについていく。
道中でエドがぼそりと「次の競技はつまんねーぞ」と漏らしてきた。

「どうして？」
「あのくそ会長の一人勝ちだろうからな」
「騎馬戦でしょ？ あの人得意なの？ そんな団体戦」
「うちの学校の騎馬戦は――」

ようやく開けたところにたどり着き、グラウンドがよく見える。
風が一気にぶわりと私めがけて吹いて、少しだけ目を細める。その中でかすかに視界に映ったものを理解して、私はすぐに目を見開いた。

「本物の馬を使う」

白馬の王子様。そう呼ぶには少し乗っている人の機嫌と性格が悪すぎるが。
慣れたように白い馬に跨る会長と彼に乗られて気持ちよさそうにしている白馬がいた。

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