【逆ハー注意】男装腐女子の魔法科男子校潜入記【2】

81ねむ ページ32

え、今爆発した？

困惑する私をよそに、周りはどっと盛り上がる。野次を投げるものや黄色い声をあげるもの。だがその中で、悲鳴や動揺の声は一切聞こえない。
頭が真っ白にフリーズして数分経った頃、私の思考能力が戻るより先に爆発を起こしたらしい主犯人の生徒はゴールのテープを切った。

「……ふぁ？」
「言っただろ、妨害ありの魔法使用可能な運動会だ。こんなんまだまだ甘いほうだぞ」

ようやく煙が晴れたスタートラインには、爆音やらに巻き込まれ動けなくなった生徒たちが多数床に座り込んでいた。誰も大けがを負っているようには見えなくて、ほっと一安心する。
すぐにヒーラーの救護班が向かい、ものの数秒で全員を治癒してしまった。なるほどね、ちょっとやそっとの傷ならヒーラーが治してくれるから心置きなく殴り合えってか。

「……おうちかえりた」
「俺もだ、おら行くぞ」
「行かないよほんっと潔いなエドお前！？」

無表情ながら心なしか嬉しそうな顔をして立ち上がったエドは、私の拒絶を受けて不満そうにまた座った。
だからサボろうとするなとあれほど。

その間も爆音は続き、防御を覚えたらしい生徒と攻撃に出まくる生徒のせいでグラウンドは爆炎と煙だらけだ。こんなん何がどうなってるか誰もわかんないでしょ。
大体一年のレースが終わり、次は二年だ。

「うひゃぁ」

パン、と先生の指先から音が出て、選手が走り出す。
二年の先輩らしく、安易な爆発ではなく自分のスピードを高めるため地面を凍らせ滑ったり、脚力を上げて跳んだりしている。よかった最初から最後まで乱闘になるかと思った、まだまともな思考をしている人もいるのだ。

「二年くらいになると防御魔法も余裕に扱えるようになるからな、妨害工作がしにくくなる。それだったら自分のスペックを上げたほうが楽だろうな」

冷静に隣でエドが分析する。
正直エドにもこのレースを走ってみてほしかった。一年の魔法使い、基メイジ代表が使う魔法で勝つレースとか格好良くない？残念ながら借り物と代表戦しか出てないから出番はまだまだだけど。

そして運動会はどんどん続き、次は弾入れになった。
ちなみにレースでの総合点は今のところ青組の勝ちで、次に白、次に赤だ。

「あれ、アルくん」

そういえば出ると言っていたか。
二年の出場者にアルくんの姿を見つける。向こうも私に気づいたみたいで大きく手を振ってくる。あ、周りから殺気を感じる。

「似非男か」
「エドって本当生徒会嫌いだよね」

82ねむ→←80ねむ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す