【逆ハー注意】男装腐女子の魔法科男子校潜入記【2】

77ねむ ページ28

がやがやと騒がしい体育館内を横切っては、壇上へと向かう。
道中の嫌悪と殺気を隠しもしない視線にはもう慣れたものだし、何よりリクとカイが後ろに控えているので特に困ることもない。
何なら、と笑顔を浮かべて手を振ってみたら「ぎゃあ！！」とかいう痛々しそうな悲鳴が聞こえた。あれ、ほかのイケメンずがやると「きゃあ！」って桃色の声があがるはずなんだけどな。心が痛いな。

「お疲れ様でーす」
「お、Aー……と双子」
「生徒会の犬ー！」
「パブロフの犬ー！」
「誰が条件反射でよだれを垂らす犬だ！」

こら、アルくん遊ばれてるぞ。

「……A……お疲れ、」
「おはようございます、Aさん」
「おはようございます、リデル、ヴァーノンさん、……あと会長」

ひょこりとヴァーノンさん越しに顔を覗かせれば、会長がチッと舌打ちをする。
そろそろ私のこと少しくらい好きになってもいいと思う頃なんだけどな？お前の心はすでに幼馴染で同級生の毛利ら……ヴァーノンさんに奪われてるってか？テオ先輩に奪われてるってか？

「そろそろ開会式宣言を始めます。そろそろ定位置についてください」
「はいはーい」

定位置って言っても、私は喋ることはないので後方に下がるだけだ。
隣に並ぶはアルくんとリデル。リデルはともかく、アルくんも喋るのに向いてると思うんだけど、喋らないよね。

私たちが定位置に着いた頃、ヴァーノンさんがマイクを手に取った。それを見た生徒たちは石を投じた水面のように静けさを拾っていく。
しん、とした体育館の中でヴァーノンさんの落ち着いた声が響いた。

「皆さん、おはようございます。本日はお集まりいただき、生徒会ともども大変うれしく思っております。それではこの後の運動会ですが、去年同様一番重要なところ……ルール説明から始めさせていただきます」

そう言うと、アルくんがひょこ、と前へと歩き出した。
途端にきゃああ！ と体育館の中が盛り上がる。噂をすればアルくん。使い方は違えど、やはり私はエスパーだったのか、くくく。いや嘘だけど。

「はいはーい！ 皆静かにね。早速説明を始めるよ。そのいーち！」

び、と彼の人差し指が立つ。

「殺傷目的、もしくは乱闘での使用には向いてない魔法が観測され次第、発動する前に退場命令が出るよ。先生たちが全員待機してるから、見逃さないし逃げられないからねー」

もう一本、指が立つ。

「盛り上がりにテンションを上げて、制裁だとかたちの悪いことをしないこと！」

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