【逆ハー注意】男装腐女子の魔法科男子校潜入記【2】

70ねむ ページ21

「Aくん、運動会に一年代表として出るつもりはないかい？」

それは、アルバート先生に頼み込んで彼の召喚獣であるドラゴンを撫でさせてもらっていた時だった。
アルバート先生が誰だか忘れてしまった人たちに説明しよう、アルバート先生は私の召喚術の先生で、前回はヒュドラを撫でさせてもらった先生でもある。思い出した？ちなみに今回撫でさせてもらっているのはリントヴルムだよ。先生はどうやら本当にドラゴンコレクターらしい。ドラゴンを一匹以上召喚獣として契約している人を見るのは先生が初めてだ。

説明はさておき、そう、開幕のセリフを先生は唐突に私に投げかけたのだ。
現在は放課後、周りの生徒数もまばら。校庭には私と先生、そして遠く離れたところで球技をしている生徒たち。間違いなく、私に向かって言われた言葉だ。何なら名前も呼ばれてるし。

「……はい？」

私がその返答を返せたのは、丸々5分かかった後だった。

「もうすぐ運動会だろう」
「はぁ……もう、すぐですかね？」
「運動会の中にジョブ対抗バトルロワイアルっていうのがあってね」
「え、嫌です」

バトルロワイアルって怖い奴じゃん。私絶対殺されるじゃん。古代ローマの闘技場で血まみれになってたやつじゃん。
私の顔が明らかに青ざめたのが見えたのか、先生はあわてて手を振り否定する。

「バトルロワイアルって言っても殺し合いじゃないよ。相手が降参したり、戦闘続行不能になればいいだけで、実際にひどい怪我を負わせることは逆に推奨されてないし、それが悪質な場合は強制退場だってある。純粋に学園内の生徒同士の力量比べの領域を出ない種目だよ」
「……にしてもなんで俺なんですか？」
「僕は実は一年生代表を選ぶことを一任されてるんだけど、君以外知らないんだよね」
「えぇ」

ただ単にちょうどそこにいたから君に決めた！ Aチュウ！って感じかい。
この先生の話は面白いし(授業はあんまりおもしろくないけど)、数少ないドラゴンコレクターなので当然尊敬はしている。だがどうしてもたまにどこか抜けている感が否めない。

「もちろんそれだけじゃないよ？ 君の召喚獣に対する姿勢や、持っている種類の多さも選んだ理由の一つだ」
「俺ってそんなに多いほうですかね」
「それに召喚時の円陣だって、君描くのすごい速いでしょ」

前言撤回……思ったより見ているようだ。
ってあれ？ この先生の前で召喚したことあるっけ。

「僕、実は風紀の顧問でさ」

ふわり、と彼は笑った。

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