50ねむ ページ1
「お前どうしたんだ、その手」
部屋の扉を開いて第一声。パチクリと瞠目したエドは、私の手のひらを指差す。
今や真っ白な包帯に包まれてしまったその手は、たしかにはたから見れば大怪我をしたように見えるだろう。大丈夫だと言ったのに、しょぼんと眉尻を下げてしまったリデルが包帯を抱えて逃がしてくれなかったのだ。
「平気平気、ただの軽いやけど。ぼーっとしてたら熱湯被っちゃって」
「なにしてんだよ……。大丈夫なのか?」
「だーいじょうぶだって! ちゃんと冷やしたし、もう痛まないし」
心配そうにこちらを見てくるエドに、私は左手をひらひらとしてみせた。
本当に心優しいやつだな、このオオカミは。
「そういえば来週、新歓だってさ」
「あぁ……もうそんな時期か」
「おー、今年は宝探しだって」
「……サボるか」
俺もサボりてー、とケラケラ笑う。
歓迎される側である私だが、生徒会役員なので参加は必須だ。一応探す役だけど。とりあえず報酬に興味ないし、萌えを求めて校内を歩き回るかぁ。
「あと俺、明日あたりから帰るの遅くなるかも。飯は先に済ませといて」
「わかった。お前の分も飯持って来てやろうか?」
「うーん、助かるけどいいや! 多分役員たちで飯頼むし」
再度了承の声を得て、私たちは昨日同様食堂へと足を運んだ。
ガヤガヤと騒がしい喧騒の中を縫うように、私たちは空いた席を見つけてはそこに座った。
エドが私と相対する席に腰掛けようとしたその時、右方から数日で聞き慣れた声がエドを止める。
「はいはーい、オオカミくんはそっち行ってそっち」
「あれ、ユーリ!」
ピンク色の長髪を揺らしてエドの腕を引っ張って私の隣の席に押しのけるユーリ。
ぽかんとしてされるがままのエドが面白い。可愛い。
「一緒にたーべよ」
「そ、それはいいけど……」
ちらり、と隣を見ればようやく事態を飲み込み始めたらしいエドは不快そうに眉根を寄せた。
まぁ、こんな大人数は嫌いだよな。もともと一匹狼な彼は、あまり群れるのは好まないのだろう。
そんな不快感をありありと表しているエドを見て、ユーリはにこりと花も恥じらう笑みを浮かべた。
「そんな嫌そうな顔をしないでよ、大神くん。僕だって一応仕事の一環なんだから」
「え、護衛みたいな?」
「うーん、そうだね。牽制? ほら」
ユーリが入り口をさすので、そちらを見れば会長たちが昨日同様入ってくるところだった。
チワワたちがきゃあきゃあと色めき立つ中、隣で大きな舌打ちが聞こえた。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - アスヤさん» 最初から見ていただいて感激です……エド君ストライクと言っていただけで嬉しいです!これからもアスヤさんをきゅんきゅんさせられるような小説を書けるよう頑張らせていただきますね!コメント本当にありがとうございました! (2019年8月4日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
アスヤ(プロフ) - 作品最初から見ましたがエドくん好きです!どストライクです!更新無理せず頑張ってください! (2019年6月4日 22時) (レス) id: 85154871a9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 歩美さん» 大好きといっていただけで光栄の極みです!地毛がそっくりですと!さぞ美しい髪をされているのでしょうね。頑張らせていただきます、ありがとうございます! (2019年5月14日 13時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
歩美(プロフ) - 初めまして!シリーズを最初から読ませていただいています!!とても面白いのに、キュン要素をしっかり取り入れてもう大好きです。主人公の地毛が私にそっくりで感動しております。更新頑張ってください! (2019年5月13日 17時) (レス) id: 45ec4d7ed1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 礼羅さん» あー泣かれないで!つティッシュ 書籍化……できたらいいですね!(無理)ありがとうございますお気持ちとてもうれしいです!エド!これからも絡ませていくしかない!亀更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2019年2月5日 22時) (レス) id: 30865517cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:始まりの神 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年8月8日 12時