【現パロ金カム】紅影 (ページ12)

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第十話尾形、白石ページ12

「おい。」

川の横にある崖に突き刺さるように存在する大岩の上でのびのびと伸びる男に声をかける。

だが、そいつはいびきをかくだけで反応はない。
この訳の分からない状況で平常心を保っていられるわけがなく、苛立ってきた。

「おい起きろ！」

尾形は痺れを切らしてその伸びている男を蹴り上げる。するとその男は横へとズレて、岩から転がり落ちた。

「あ、」

そう思ったが遅かったようで、男は岩から空中へ移動する。

「え、えええぇぇえ！？」

不自然な浮遊感で目が覚めたのか、男が叫ぶ。
俺は黙ってそれを見た。
男は重力に引っ張られ視界から消え去った。

「見てないで助けてよおぉっ！！」

と思っていたのは自分だけで、下をチラリと見ると片腕だけで岩のくぼみにしがみついている男がいた。

「･･･」

尾形は黙ってその男に手を伸ばした。

無表情で、冷たくて、何も感じないその顔は男にとっては恐ろしい物に感じ、唾を飲んだ。

「な、なんで落とすのさ･･･」

男は岩の上へ上がると服に着いた土埃をほろいながら、そう言う。
尾形は男の無事を確認すると、現在、気になる事の質問をした。

「おい。ここは何処なんだ。」

「いきなり！？つか、こっちが知りたいわ！！」

そしてもう1つ質問をする。

「つぅか、お前は誰なんだ」

「まず聞くならそっちから名乗って欲しいね！！」

「尾形百之助だ。古臭い名前だろ？」

尾形はそう笑って答える。
男は笑っていられる尾形を見て、再度また恐ろしく感じた。

「そ、そうは思わないけどねぇ。
あ、で名前だっけ？俺は白石由竹」

「へぇ。じゃあ質問を戻すが、ここはどこか知っているか？」

「へぇって·····まあいいや。
ここがどこかなんて俺が知るわけねぇだろ？」

白石は軽くそう答える。
その身振り素振りは嘘をついているようにも見えなかったが、尾形には腑に落ちない点があった。

「なら、なんであそこで寝てたんだよ」

「知らないよぉー。起きたらいきなり中に放り出されてたんだもの」

「そうか」

実は尾形も起床して初めてこの世界にいることに気がついたのだ。
尾形が起きた場所は古びた廃墟のベッドの上。
あながち、寝るには間違いのない場所だった。

なのにこいつは岩の上で寝ていた。
拉致されてここまで連れてこられても、ここで放置をするか？

なんて違和感が湧くが、今はそんな事は関係なかった。