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彼は墓石を背にした。
同時に太陽が彼に直接当たる。日光が彼の髪を透かし、透明感を持たせた。褐色の肌はきらきら光り、彼の笑顔が輝いて見える。あたしは彼の垂れた目がさらに垂れる笑顔が好きだ。蒼い瞳が細く見える笑顔が好きだ。
「……何?」
「ううん、なんでもない。……太陽が似合うなーって思っただけ」
「僕に?」
「うん。すごくきれいだよ、天使みたい」
天使はうれしくないかな、と首をかしげると、彼は背にしたはずの墓石をくるりと振り返り、しゃがんで何かぶつぶつ呟く。何を言っているんだろうと近づくと、彼はこんなことを言っていた。
「ずるいとは思わないか。なんなんだ太陽が似合うって、天使みたいってなんだよどんな褒め方だ。彼女はこういうところがあるから困るんだ。この先やっていけるか不安になってくるんだが、なあどう思うヒロ……」
…………。
これは、喜んでいる、のか?
彼はたまにこうなるときがある。大概はあたしが彼を褒めたときにこうなるのだが、いつも共通する単語はこれだ。"ずるい"。何がずるいと言うんだ、あたしは正々堂々褒めているというのに。
ただ、こうなった直後、彼は頬を染めて何かしらあたしを褒めてくれるので、うれしく思っているのは確かだろう。褒められてうれしくない人なんてなかなかいないはずだ。彼は照れ屋な上に褒められ慣れていないからこうなるだけ。そのわりに自信家ではあるけど。
彼はやっぱり頬を染めて振り向いた。
「……Aはおひさまのような人だって、僕はずっとそう思っていたんだ」
「あたしが、おひさま?」
「そう。あったかくて、僕を照らしてくれる」
彼がそう思ってくれていたなんて知らなかった。じわじわと熱が顔に集まっていくのを感じる。もしかしたら、彼も今までこんな気分を味わっていたのだろうか。だとしたら申し訳ない。これは、恥ずかしすぎる……。
彼は顔を綻ばせた。
「僕に太陽が似合うってことは、Aと僕はお似合いってことだな」
「……そういうことに、なりますね」
「これからも僕の太陽でいてくれないか? 僕は太陽がないと寒くて死んでしまうかもしれない」
彼がいなくなったとき。あたしは寂しくて寒くて、凍死してしまいそうだった。そのつらさがわかっているから、あたしの返事は一つしかない。
「ずっとあなたの太陽だよ、零」
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えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時