青空の下 ページ42
穏やかな土曜日の昼下がり。雲一つない青空の下、子供たちの笑い声が響いている。空中に踊るサッカーボールを追いかけていく様子を見ながら公園のベンチに座り、隣の彼女と漫談している途中、彼女は深くため息を吐いた。
どうしたの、と訊いてみると、彼女はもう一度深くため息を吐いて話し出す。
「急にいなくなって、ようやく戻ってきたと思ったら……新一のやつ、私じゃなくて子供たちとばっかり遊ぶんですもん」
「あはは、やきもち? 新一くんはコナンくんに似てるから、子供たちも懐いてるようだね」
「コナンくんは外国の両親のところに行っちゃうし。寂しいなぁ」
「こら、そんなこと言ってると今度は彼が嫉妬しちゃうよ」
むう、と唸る彼女______蘭ちゃんを宥めると、蘭ちゃんは「ですね」と苦笑した。彼氏である新一くんは嫉妬深いところがあるので、小学二年生のコナンくんにさえ嫉妬してしまうのだ。蘭ちゃんはその苦労を思い出してか、やや疲れた顔をする。
オツカレ、と笑いながら肩を叩くと、笑い事じゃないんですよと怒られた。どうやら嫉妬した彼の相手は本当に大変らしい。彼のほうからも話を聞くあたしはお互いさまだと思うが、そんなこと本人たちに言えず。
蘭ちゃんはふと顔を上げて、次の話題をあたしのことに決めた。
「結婚されるんですよね、Aさん! 新一に聞きました」
「情報回るの早っ……結婚式は開かないから、呼べなくてゴメンね」
「いいんですよそんなの、おめでたいんですから。……ああでも、Aさんのウェディングドレスは見てみたかったなぁ」
「それ、この間園子ちゃんにも言われた。そんなに見たい? 自分のときの参考にしたいの?」
蘭ちゃんは七秒ほど遅れて「そういうことじゃないですよ」と返事した。絶対自分の結婚式のこと考えてたな……あるいは、新一くんの白タキシード姿。恋する乙女はわかりやすい。
にやにや笑って蘭ちゃんをいじっていると、子供たちから「蘭お姉さんも一緒にやろうよ!」とお声がかかった。明るく返事をして子供たちの輪に入っていく彼女と入れ替わりに、さっきまでサッカーボールを追いかけていた新一くんが隣に座る。
ちなみにあたしはハブられているわけじゃない。あたしの運動神経の悪さと体力のなさを知った子供たちが気遣ってくれているだけだ。情けないことこの上ないな。
752人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時