あの日、未来のトリプルフェイスを拾った。【名探偵コナン】

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沈黙を破ったのは運転席の男性だった。彼はこちらを窺うように、零くんを畏れながら発言する。



「あの、安室さん。ご自宅までお送りすればよろしいのでしょうか……」

「ああ。それと降谷でいい、風見。Aも、今は零でいい」

「しかし、そちらの女性は」

「Aはいいんだ。彼女は僕の、…………協力者だ」



降谷さんの？！ と風見さんが驚いた。零くんの？！ とあたしも驚いた。いつからあたしは零くんの協力者になったんだろう。どちらかと言うと、保護者のような立ち位置だと思っていたのだが。零くんもあたしを慕ってくれているようだし、あたしも零くんがかわいくて仕方がないし。

結果的に風見さんを騙してしまい、何とも言えない気持ちで車に揺られる。黙っているのも申し訳なくて、「松七五三Aです」と自己紹介をする。風見さんも戸惑いながら「風見です」と返してくれた。

零くんの顔を盗み見る。彼は普通の顔をしていた。ポーカーフェイスが上手くなったのか、それともこんなの嘘の内に入らないのか、どちらかはわからないが、零くんにとっては大したことじゃないのだろう。

きれいな横顔だなぁ、と食い入るように見つめていると、零くんと目が合った。彼は若干頬を朱く染めながら、「そんなに見つめられると恥ずかしいんだが」と苦笑する。



「気づいてたの？」

「そんなに熱い視線を注がれたらね。見惚れてた？」

「うん、見惚れてた。やっぱ零くんきれいな顔してる」

「……はぁ、Aはまた平気でそういうこと言う」



零くんは口許を腕で隠しながら言った。耳まで真っ赤だ。どうやら彼は本気で照れているようだ。照れ屋なところは昔から変わらないな、かわいいやつ。

ニヤニヤしながら彼を見ていると、彼はじとりとあたしを睨み、あたしの頬を両手で挟んだ。そのままむにゅむにゅと揉まれたり、伸ばされたり、弾かれたりされる。あたし、いま、あそばれている。零くんちょっと意地悪度増してる……。

仕返しであたしは零くんの髪に手を伸ばした。髪をくしゃくしゃにしたり梳いたり、ちょっと編んでみたりと好き勝手させてもらうが、零くんは全く抵抗せず、「くすぐったい」と言いながら気持ちよさそうに目を細めた。かわいいなぁ、零くん。



「帰ったら、Aの料理が食べたい」

「いいよ。何が食べたい？」

「……スパゲティグラタン」

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