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目で相手の条件を促すと、赤井さんは表情を崩さず条件を述べる。
「こちらの条件は、『君の身辺を保護する代わりに組織について持ちうる情報をすべて提供すること』だ」
「あたしが組織の人間だとは思わないんですか?」
「組織の人間かどうかくらい見分けがつく。君はこれに気づいていないしな」
そう言って、あたしが肩からかけているショルダーバッグの中から、小さな機械のようなものを取り出した。????
「なんですか、それ」
「その様子じゃ本当に組織の人間ではないな……これは盗聴器だ。ジョディが席を外す直前に仕掛けて行ったよ。今のこの会話も聞いているはずだ」
「下っ端だったら盗聴器に気づかなくても仕方ないと思いますけど?」
「君は俺を知らなかったろう。俺は今組織全体に狙われているんだ」
あ、それは知ってました。けれどあらぬ誤解を招くのは本意じゃないので、そういうことにしておく。都合のいい解釈をしてくれた。
赤井さんが話を戻し、「どうだ?」とこちらを伺う。えっと、持ちうる情報をすべて、だっけ。念のためにスマホでツイッターを開く。よかったつながった、フォローしてたアカウントは全部消えてるけど。文字を打ち込みながら、赤井さんに首を振った。
「『持ちうる情報をすべて』には同意できません。情報はあたしの切り札なので、今後のために大切にしておきたいです」
「では交渉は決裂だな。君はアメリカから出られないし、FBIの監視付きで生活をすることになる。ふむ、非常に残念だ」
「いいですよ、頼りはまだありますから。今話題に出ていた彼らとかね」
「ホー」
赤井さんの緑色の目が鋭く光る。これだから駆け引きって苦手なんだよ、相手をゆするようなやり方は好きじゃない。
こんなことはこれっきりにするから、赦してね。と、心の中で手を合わせた。
「君にコンタクトがとれるのか?」
「路地裏か……遊園地や港の倉庫、雨の日の街中などで取引現場を目撃できそうですよね。それに、クリス・ヴィンヤード。彼女ならすぐ見つかりそうです」
「殺されない自信があると?」
「だから情報ですよ。彼らはほしがるでしょうね、裏切り者の情報なんかは特に」
そう言って赤井さんを見やると、笑みはとうに消えていた。お願いだから条件を飲んでくれ〜〜……あたしだってあなたたちとは仲良くしたいんだ。
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えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時