* ページ23
話しているうちに涙は止まった。零くんの赤くなった目許を親指で撫でると、お返しとばかりに同じことをされる。そうしていられるのがうれしくて、ふふ、と笑った。
零くんは目を細めてあたしを眺める。Aに報告しなきゃいけないことがあるんだ、と言った彼は、もうまっすぐ前を見据えていた。
「警察官になった。ここで働いているのも私立探偵をしているのも潜入でだ」
「潜入? 警察官ってそんなこともするの?」
「……僕の所属は警察庁警備局警備企画課、通称ゼロの公安警察。詳しくは言えない。わかってるだろうけど安室透は偽名、呼び方は今の『透くん』でいい。『零くん』は二人のときだけだ」
もちろん外はダメだぞ、と言う零くんに了承の意で頷く。知っていたけど彼から聞くのは初めてだ。重大な秘密を教えてくれたのは信用してくれてるからなのかな、と期待が膨らむ。
…………重大な秘密?
「ちょ、ちょっと透くん、そんな重要なことあたしに言ってもいいの?!」
「Aには本名知られてるし。……本当ははぐらかすなりするべきなんだが、警察官になったら絶対Aに報告するって決めてたからな」
「そんなの……」
「いい。Aに嘘は吐きたくないし、吐いてもすぐバレるってことは昔からわかっていたよ」
だって零くん嘘が下手だったんだもの……隠すのは上手だったんだけど、勘でわかっちゃうんだよな。そんなに勘は鋭いほうじゃないんだけれど、零くんのことに関してはよく当たる。
そんなこともあったなと過去を思い出しつつ、絶対口外しないと約束した。
「詳しいことはあとで。……そろそろ戻らないと梓さんに叱られる」
「これから忙しくなる時間帯だしね。迷惑かけちゃ申し訳ないし、コナンくんも待たせてるし、戻ろうか」
「そういえば、コナンくんとはいつ知り合ったんだ?」
「さっき。なりゆきで」
手をつないで店内に戻る。炎上したくないんだと叫びながら手を離そうとしたり、十五年も離れていたんだから少しくらいいいだろうと叫びながらそれを阻止したりする攻防があったのは秘密にしておこう。
店内に戻り、コナンくんのいるさっきの席に戻る。「ちゃんとお話できた?」とこちらを伺うコナンくんに「うん、ありがとう」と返した。
梓さんに謝り終えた零くんは、当然のようにあたしの隣に座った。こいつ反省してねえな。
752人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時