主人公の言う通り ページ18
優しい笑顔のお姉さんに「いらっしゃいませ!」と出迎えてもらい、コナンくんと二人でボックス席に腰かける。今は午後四時前で、高校生はまだ授業が終わっていないのか、お客さまは数人のご老人や親子連れなどだ。
平日だし、これから忙しくなるのかなーなんて思いながら店内を見回す。あんなに緊張して入店したのに、例の彼の姿は見えなかった。カウンターの奥にもいなさそうだし、今日はシフトお休みなのかなと考える。
元気にオレンジジュースを二つ注文してくれたコナンくんが、眉を下げて「いないね」と言った。
「残念だね、安室さんいないみたいで」
「そうだねぇ……でもそれを抜きにしても一回来てみたかったから、さほど残念には思ってないというか」
「嘘。顔が残念って言ってるよ」
「えっ」
指摘されて、両手で頬のあたりを触ってみれば、むにゅむにゅと……お、お肉の感触が……する。最近また肉がついてきたような。そろそろダイエットでも始めるかな。
……ンン、あたしは今、そんなにわかりやすい顔をしていたのだろうか。いつだったか、零くんにポーカーフェイスが上手だと褒めてもらった。あのときからちょっと自信があったのだけど、零くんも所詮十四才ってことか。いやでも、十四才でも零くんはいろいろハイスペックだったしな……。
そう? と若干傷ついたことを隠し訊くと、うん。としっかり頷かれた。
それから榎本梓がオレンジジュースを二つ持ってきてくれて、ポーカーフェイス下手になったのかなぁと引きずりながら一口飲む。
「勝手にオレンジジュース頼んじゃったけど、お姉さんも何か頼む?」
「ん、そうだなあ。実はハムサンドが食べたかったんだよね」
「ハムサンド? 今も頼めるけど、せっかくだから安室さんに作ってもらいたいよね。梓さーん、今日安室さんはー?」
コナンくんが呼びかける。梓さんは買い出し行ってるよーと答えた。一時間ほど前に出たから、もうすぐ帰ってくると思うよ、とつけたされた言葉に、コナンくんはぱあっと顔を輝かせる。
よかったねと言いだしそうな彼の顔に、あたしはしっかり頷いた。
「コナンくん、一つ言っておくね。正確には『仲良しだった』。だから、彼があたしを覚えているとは限らない」
だから余計なことは言わないでね、と言外に言うと、彼はよくわからないというような表情をなった。
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えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時