「愛してない」2 (ページ37)

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「あたし、アンタは好きだよ。」

『え？』

マンションが見え始めた頃、雅さんが呟いた。

驚いて雅さんを見つめる。

断言出来る。

普段、雅さんはそんな事を言う人じゃない。

『……あの？』

「何その反応……ムカつく。」

『あはは……』

「それ。そういうのムカつくけど、好き。嘘つかなさそう」

『えー？人間誰だって嘘くらいつきますよ。』

そう言えば、雅さんは急に微笑んだ。

…何か、おかしな事言ったかな。

こんな優しく笑う顔を見た事がない。

『…雅さん？』

「お願いがある。」

『え？』

「照を、助けてあげて。」

『…』

「お願い。」

その瞳は真剣そのものだった。

だけど、わたしの答えなんてもう決まってる。

『……出来ないよ』

「なんで？」

『好きだし、わたしがひかるさんの一番になりたいって…思うけど。』

「……」

『ひかるさんの中のさくのさんは、絶対、消えるの？』

「……それは、」

わたしは、弱い人間だから。

“振り向かせる”

“諦めたくない”

“絶対、彼の一番になる”

……そんな無謀な事、したくないの。

このままで。

このまま側に居たい。

さくのさんの事を好きなままでいいから、わたしを側に置いて欲しい。

わたしはそんな弱い奴。

『…ごめんなさい』

「分かんなくも、ないけど。」

『……』

「…ごめん。アンタに頼り過ぎた。」

しおらしく、わたしに頭を下げて謝ってきた。

雅さんが謝るのも何か違う気がして、雅さんの肩に触れて顔を上げてもらう。

『わたしの方が、謝りたいです。』

「……」

『逃げてるだけって、ちゃんと分かってるんですけどね。』

雅さんの顔が曇る。

それが何故なのか何となく、分かった。

分かったけれど、わたしは自分の気持ちを変えようだなんて思えなかった。

逃げて、何が悪いの。

愛してるから、受け止めるだなんてただの綺麗ごと。

愛してるから、受け止められなくて。

それでもって、縋り付く。

『依存したくない』と言っておきながら。

わたしはまた、依存するの。

...