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ひかるさんの過去を知った。
だけどわたしは、最低だけど、向き合えるとは到底思えなかった。
未熟で、更に人としてダメダメなわたしには、何が正しくて何が間違ってるのかだって分からないから。
さくのさんに対するひかるさんの気持ちだって、深すぎて、重すぎて。
勝てない…なんて。
そんな場違いな事思ってしまった。
深澤さんや、雅さんはわたしを買い被ってる。
ひかるさんがわたしと同居してるのだってきっと、寂しさを埋めるためでしかない。
さくのさんの、代わり。
きっと、あの服も。
さくのさんに着せてあげらんなかった物をわたしに着せてる。
ただそんだけなんだ。
なんだ、虚しいだけじゃないか。
勝手に好きになって、しかも結構な片想いで。
虚しい。
だからわたしは、逃げたの。
わたしとひかるさんの生活はあれから驚くぐらい、何ひとつ変わっていない。
ひかるさんも何も言わない。
わたしもその事について触れない。
お互いが、感じている。
言ったら終わりだと。
この関係が終わってしまうんだと。
わたしは嫌だ。
わたしは、この場所を失いたくないの。
…ひかるさんも、そう思ってくれてるだろうか。
少しでも、思ってくれてる?
そうだったらいい。
それだけでいい。
わたしが、さくのさんの代わりだというのなら、さくのさんより、ずっと多くずっと沢山、ひかるさんを愛するの。
それだけでいい。
「A、」
ちょうど着替え終わった時、扉を叩く音と共にひかるさんの声が聞こえた。
はい、と返事をすると扉が開いた。
「これ、合い鍵。」
『えっ…』
「合い鍵あれば色々と便利だろうから管理人さんに頼んだ。」
嬉しくて、でもそれは声にならなかった。
気付いたから。
『…あの、でも、雅さん』
「え?」
『雅さんも合い鍵…』
「ああ…」
ひかるさんは合い鍵をテーブルの上に置いた。
そしてそれをじっと見つめながら口を開く。
「あれは雅にあげたんじゃない」
『え?』
「…桜乃に、あげた。それを多分雅が預かってんだ。」
心臓が、止まりかけた。
ひかるさんの口から聞きたくない言葉を、わたしが言わせてしまった。
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かえで(プロフ) - この小説大好きです!!!いつも更新楽しみにしてます(^^)頑張ってください☆ (2016年3月21日 22時) (レス) id: 683565b60e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さと | 作成日時:2016年3月1日 16時