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信じられない。

そんな目を見していたと思う。

深澤さんも苦笑いしながらわたしを見ていた。


「問題はさ、その中で血が繋がってないのは、照と再婚相手の人だけでしょ?」

『あ…はい。』

「今のお母さん、照の事あんま好きになれなかったんだよね。お父さんは忙しい人だから家に居ないし。」

『……』

「だから照にとって、桜乃さんは“特別”になった。……桜乃さんのところが、照の居場所になった。」


居場所を見つけた時のあの嬉しさを、わたしは知ってる。


居場所をくれた人が全てになっていく、あの愛しさをわたしは知ってる。


ひかるさんにとって、さくのさんが全てで。

ひかるさんを救ってくれたのが、さくのさん。


ああ、わたしどうしよう。

どうしよう。


これは、嫉妬だ。

会った事もない“さくのさん”に、嫉妬してるんだ。


「照は言ってた。何度も何度も死のうとした自分を救ってくれたのが桜乃さんなんだって。」

『……』

「俺らに、ハッキリ言った。“桜乃を愛してる”って」


胸が痛い。

俯いたわたしを心配するように、深澤さんは頭をゆっくり撫でてくれた。

震える唇から息を吸い込んで、吐く。

やばいと思った。

泣きたくなったから。


「Aちゃん。」

『…すみませ、』

「もう、やめとく?」

『……』

「いいんだよ。無理しない方がいい。」

『だ、大丈夫、』

「Aちゃん…」

『大丈夫…ですから、』


明らかに声は震えていた。

本当は聞きたくなかった。

だけどわたし、あの人に言ったから。


“愛してあげる”


そう言ったから。


もう逃げらんないの。

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かえで(プロフ) - この小説大好きです!!!いつも更新楽しみにしてます(^^)頑張ってください☆ (2016年3月21日 22時) (レス) id: 683565b60e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さと | 作成日時:2016年3月1日 16時

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