「愛してない」2 (ページ4)

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「体調は？」

『だいぶ楽になりました。あ、朝ご飯作りますね』

「いいから、お前はジッとしてろ。」

『え、うわ！？』

ベットから起き上がるや否や、ひょいっと体が宙に浮く。

そのまま子供みたいにひかるさんはわたしを肩に担ぐとリビングに向かった。

『ちょっと！？わたし荷物じゃないんだから！普通お姫様抱っことかじゃないですか？！』

「つーか軽いな。お前今日から太らす。」

『嫌です。』

「男はちょっとぽっちゃりした奴の方が好きなんだけどね」

『……ひかるさんは？』

ピタリと、ひかるさんの動きが止まる。

しまったと思ったわたしは慌てて言い訳を考えた。

『いや、ひかるさん的に、一般的に……』

「タイプなんて考えた事ねぇなぁ」

『……え、』

「好きになった奴がタイプ？」

今時の俳優が番組でタイプを聞かれた時に言うセリフみたいだった。

つまり、それは、逃げという事。

ひかるさんの聞かれたくない事のひとつ。

『ひかるさんよく分かんない』

「どうも」

リビングで降ろされて、大人しくソファに座っていると、ココアを持って来てくれた。

「何かコンビニとかで買ってくる。買って欲しい物ある？」

『わ、わたしも…』

「お前は駄目」

『……ないです』

「了解。適当に買ってくるな」

黒のジャケットを羽織り財布を持ったひかるさんに、わたしは慌てて口を開いた。

『行ってらっしゃい！ひかるさん！』

「はいはい、お前好きだなそれ」

『行ってらっしゃい！』

「行ってきます」

ひかるさんが出て行った部屋は、シンと静まり返り寒ささえ感じた。

おかしいな。

エアコンだってつけてる。

いっつも、こんな果てしない寂しさを感じる。

ひかるさんが居る事に慣れたからか、独りが余計怖くなった。

将来、自立したら、ここを出て行かなきゃならないのに。

こんなんじゃいつまで経っても駄目人間なままだ。

『ひかるさん…』

静かなリビングに響くわたしの声は、自分で聞いていても情けない程寂しげなもの。

どうしようもない不安が、わたしを襲う。

寂しくて寂しくてたまらないこの感情は一体何なんだろう。

ピンポーンと、無機質なチャイムが鳴ったのはその数分後だった。