「愛してない」2 (ページ30)

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わたしのこんなちっぽけな手のひらで、何かを守ることが出来るなら。

『わたしが貴方を、愛してあげる。』

貴方はそんなつもりなかったのかもしれないけれど。

あの日わたしを拾ってくれた時、貴方はわたしに、確かに“愛”をくれたの。

わたしよりもずっと高い、広い、大きい背中に抱き付いて。

縋り付いてるみたいな格好なのに、何でだろう。

わたしが、ひかるさんを包んでるみたいな、そんな不思議な気分になった。

ずっと、心は穏やかで。

今なら、全てを知っても受け止める事が出来るかもしれない。

そう信じたかった。

逃げのびた先にひかるさんが居ないんなら、ひかるさんの過去を、踏み荒らしてから逃げてやる。

そうしたら貴方はいつか、わたしを愛してくれるのだろうか。

「何なの……お前。」

苦し気にひかるさんが呟いた。

泣いてるみたいに聞こえるそれに、わたしの胸はキュッと苦しくなる。

震えそうになる声で言葉を紡いだ。

『ひ……ひかるさんがいけないんじゃん…拒絶ばっか、するから…』

「……」

『愛してないって、言いながら、わたしに…触れてくるから、』

「……、」

『ずるいんだよ…ひかるさんは…！』

ほんとは、いいの。

ひかるさんがわたしを拒みたいならそれでいいと思ってた。

けど、やっぱりわたしは、貴方に愛されたいと思ってしまった。

「バカだろ…」

『バカかも。』

「ほんと、調子狂う…」

『ごめんなさい。』

「こんな筈じゃなかった、」

『わっ……』

いきなり身体を反転させたひかるさんは、わたしを正面から抱き締めた。

「…A。」

『はい。』

「ありがとう」

『…っ、はい。』

「ごめんな、」

『……』

「ごめん……」

何度も、何度も、ひかるさんはわたしに謝って。

何に対して謝ってるのか、今は考えたくなかった。

だってもう、わたしの心は決まってる。

..