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『ひかるさんに…聞きたい事が、あって。』
「何?」
『さくの…』
「……な、」
『さくのさんって、誰』
聞くつもりじゃなかったのに。
思わず口走ってしまった。
「…何でお前が、知ってんの」
『……』
「答えろ」
初めて、こんなに“怒り”をあらわにさせたひかるさんを見た。
でも何故かわたしの心は落ち着きがあって。
ああ怒らせてしまった。
その程度だった。
その中には多分諦めだとか悲しみだとか、そんなありきたりな感情もあるけれど、わたしは素直に、知りたいと思った。
ひかるさんを縛る“さくの”さんの事を、知りたいと。
だからわたしは問い掛けた。
きっとそれを聞けばひかるさんとの関係は崩れてしまう。
分かっていた。
「ふっかから?」
『ちが、』
「じゃあ雅か。」
ここで黙り込むのはまずいと思ったけれど、わたしに返せる言葉を見つける事は出来なかった。
片眉をピクリと上げて、ひかるさんは笑った。
ゾクリと、身体中が粟立つような、そんな笑い方。
「…それで?」
『え?』
「何が目的?」
『……』
「それを聞いて、お前は何がしたいの?」
何がしたいの、なんて。
そんなのないよ。
信じられないような目で見ると、ひかるさんはまた笑った。
「お前に俺の事を言って何なるの?」
『何になるとかじゃなくて……そうじゃなくて、ただ知りたくて、』
「知りたい?何で?だから何で知りたいの?」
『それは……』
“好きだから”
今言ったら、確実にアウトだろう。
そんな告白が出来る程、わたしには勇気がないし。
どうしようもなくなって、視線をずらす。
そんなわたしを見たひかるさんは、呆れたような……ううん、違う。
突き放すみたいに冷たい溜め息をついた。
「それお前に言ったとして、結局どうなんだよ」
『……』
「それともこないだお前の過去を聞いたから。だから今度は俺の事話せって?」
『ち、違う、』
「冗談じゃない。」
そう言って、ひかるさんはわたしを見た。
その瞳が、泣き出してしまうんじゃないかって程、揺れてたのに気付いて。
ああ、わたしが…わたしがこの人を守らなきゃ駄目だって。
離れたくない。
今わたしが離れて行けばこの人、駄目んなっちゃう。
馬鹿馬鹿しいよね。
そんな事あり得ないのに。
だけど、そう思った。
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かえで(プロフ) - この小説大好きです!!!いつも更新楽しみにしてます(^^)頑張ってください☆ (2016年3月21日 22時) (レス) id: 683565b60e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さと | 作成日時:2016年3月1日 16時