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わたしの頭をゆっくり撫でてくれる大きな手。

気持ちいいし、あったかいし、何よりこの人の側は、安心する。


「…なあ、」


吐息混じりな声に、フワフワしていた意識のなかから、ゆっくりと覚醒していく。


「今日…雅から何か聞いた?」

『え?』

「アイツが、お前の部屋行った時」

『……ああ、何も、』


“雅さんわたしの部屋見て不機嫌になって出て行っちゃいました”


そう言えばひかるさんは安心したように軽く息を吐く。

一体何に安心したのか。


貴方が言いたくないのなら。

いいよ、何も気付いていない振りをしてあげる。

それで貴方が安心するのなら、わたしにとってそれが嬉しいから。

聞かない。

何も聞かないから、側に、居させて欲しい。

今はただ、それだけだった。





ーーーーーーーーー



「神谷。昨日、お前の親御さんから学校に電話来たぞ」

『……え?』


大学に行くなり、先生に呼び出されたかと思うと、椅子に座るなりそう告げられた。


「親御さん、お前のアパートに連絡したとか言ってた。しかも繋がらなかったって」

『……』

「お前あのアパート出て行った?」


心臓が、嫌な音を立てて鳴り続けている。

血の気がなくなるってあれ、本当みたいだ。

手足さえ痺れてきた。

どく、どく、どく。

胸が、苦しい。


『……あの人、何て?』

「いや、心配、してたぞ。」

『先生、そんな嘘はいいから。』

「……」

『どうせ、わたしが変なとこと関わってないかそれが心配なんでしょ。』


わたしは昔から決まって同じ夢を見る。

同じ、というか、同じ人が出てくる夢だ。

内容は違うけれど、人も夢の雰囲気もだいたい同じ。

……夢の中のわたしは、幸せそうに笑ってるんだ。

わたしの望む幸せを、紙いっぱいに描く。


美味しいものが食べたい。

可愛い服が着たい。

色んな幸せを思い描いては、その幸せが叶う日を待ち望んでる。


わたしの家族が、わたしを愛してくれますように。

わたしはいつだって、そう願ってた。


「神谷…?」

『…わたし、ちゃんとしたとこで暮らしてますから…大丈夫です。』


これ以上話していたくなくて、逃げるように教室を飛び出した。

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かえで(プロフ) - この小説大好きです!!!いつも更新楽しみにしてます(^^)頑張ってください☆ (2016年3月21日 22時) (レス) id: 683565b60e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さと | 作成日時:2016年3月1日 16時

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