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大きな石に帰る人 ページ12

そういえばもう1人、話していない人がいた。

その人に会う時は、いつも同じ場所だ。

月がとてもよく見えて、秋色の草原が銀色に光るほどの場所。

あと、お月様が三日月辺りのときにその草原に行くと、その人はお月様を羨ましそうに、
懐かしむように、じっと見つめている。

そして不思議ことに、どれだけ静かに近づいてもその人には気づかれてしまう。

月(つく)「あら、今日も来たのね。」

矢「あっ、はい、月(つく)さん」

月さんはいつも無表情で笑うことは少ない。

だけど空の月がきれいだというと静かに笑っていた。

白銀のきらきら光っている髪を頭頂で団子のように丸く小さくまとめ、それでも溢れる髪が草と一緒に揺れている。

矢「あの、そろそろ秋なので、みんなで木の実を採りにいくんです。月さんも一緒にどうですか?」

月「私はいいわ、行かない。」

こんなふうに、月さんはなんでもかんでも断ってしまうのだ。

月「そういえば、空の月が純粋で美しいこと、忘れないでね。」

急に何を言い出したかと思ったが、忘れないで、と念を押し、月さんは去ってしまった。

次の日、

弓「じゃあ兄ちゃ、木の実採ってくるね〜」

矢「ああ、気をつけろよー。俺は兎を採りにいくからなー。」

それからいつ程経っただろう
大人1「おいこっち来い!!」

大人2「なんだ!?」

大人1「あいつが、、山の神が出やがったんだ!」

その声が聞こえた瞬間、俺は為朝山へ向かった。
いつも弓が木の実を採りに行くところといえばそこだ。

殺される。 死ぬ。

もし現実世界で俺らの拠り所、つまり元の道具が壊れたり、大事にされなくなったら、
その瞬間その付喪神は問答無用で死ぬ。

もし、こちらの付喪神の世界で付喪神が死んだら、現実世界の道具もまもなく壊れる。

ただそんなことより、弓は俺の家族だ、家族は家族を見捨てたりしない、俺はいい子だか、ら…

いい子?

俺はいい子に、なるために生まれてきたんじゃない、育ってきたんじゃ、生きてきたんじゃない、
どこから俺は間違えていたんだ?

独りぼっちの考え→←山の神



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作者名:山岸ふあ | 作成日時:2020年4月14日 21時

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