20:恋心はクソ ページ43
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カツン、カツン、と階段を降りる音が響く。
階段を最後まで降りると道を囲む岩場が灯篭の明かりで怪しく照らされていた。
「こんな地下室もあったんですね。知らなかったです。」
「まぁ1年生は入る機会なんてないしね〜。」
私を急に呼び出した五条先生の横に並んで一本道をどんどん進んでいく。
ただでさえ広くて建物がいっぱいあるのに地下室まで無数にあるなんて。私卒業するまでに1回は迷子になっちゃいそうだなぁ。
はは、と校内で迷っている自分の姿を想像して乾いた笑いが零れた。
そんな私を他所に進んでいった五条先生の手で道の先にある重そうな扉が開かれ、暗闇に慣れ始めていた視界に明るさが戻る。
眩しさに目を軽く閉じた私の視界に虎杖くんともう1人、見たことがない人がいた。
「悠仁の任務にAの術式を借りたくてね〜。」
「あ、そういう呼び出し……」
「んで、コイツが引率の脱サラ呪術師!七海くん!」
七海、という名前に何故か聞き覚えがあった。
会ったこともないし術師の家系に七海家なんてないはず。それなのに聞き覚えがあるってことは誰かから聞いたってことかな。
そうやって自分の記憶をちょっと探って「あ、」と声を漏らした。
「兄と同学年の……」
「確かに同学年に慶光院という名前の術師はいましたね。それより先に挨拶でしょう、はじめまして慶光院さん。」
「あ、はじめまして。」
五条先生の知り合いとは思えないくらいちゃんとしてる感じがする。
まぁ五条先生が代わりに引率に選んだり、公にできない虎杖くんの生存を言ってるくらいだから信用できる人なんだろう。
兄からは頭固そうな人間がいたってくらいの話しか聞いてなかったけど。
「A 兄ちゃんいたんだな。」
「3人いたよ、今はみんな呪術師じゃないけど。」
私の言葉に「いた……?」って言う虎杖くんから視線を逸らして五条先生に「それで任務って?」と話を振る。
今ここで慶光院家の人間が呪霊を懐柔しようとして何人も呪術師として使い物にならなくなった話をしたら元の話がずれちゃう。それにそこまで人にする話じゃないし。
「昨日、特級呪霊に襲われましてね。」
「フェロモンで動きを止めるか誘き寄せたい、と。」
「話が早くて助かります。それより、」
私の前に立った七海さんから右手を両手で包まれる。
何してるんだ、と思って七海さんを見上げた私に七海さんは「結婚を考えたことは?」と突拍子もないことを言った。
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作者名:もも | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/Momo_UxxU_
作成日時:2021年2月2日 19時