12:巧妙な口述 ページ26
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昨日と同じ路地裏へと足を進める。と、そこには傑くんの姿があった。
会いに行く、そう言われたのに自分から会いに来ていいのか迷ったけど傑くんのことだから高専関係者にバレないように私を連れ去りそうだったから来ちゃった。
「自分から来てくれると思ってたよ。」
「来ないと連れ去られそうだったからだよ。」
「つれないな、会いたいって言ってくれるのを期待してたんだけど。」
冷たい視線に肩が強張る。
今の傑くんには宿儺の時とは違う圧迫感がある。
そんな私の様子に気付いたのか「そんなに警戒しないでくれよ。」と言われる。
「昨日計画を見直してね、Aがいる方が順調に進みそうなんだけど……。」
「私の意見は変わらないよ。非術師を消すなんて駄目だよ。」
「それは残念。」
ふふ、と怪しげに笑った傑くんは立ち上がって私に近付く。
昨日とは違って今日は万が一に備えて式神も呪具も持ってきてる。何かあればこれを使って逃げるしかない。
「宿儺の器……」
「は?」
「彼にまた会いたいと思わないかい?」
どこから情報を仕入れてるのか分からないけど急に虎杖くんの話をされて戸惑う。
虎杖くんが亡くなって会いたいって思うことは何回もあった。
でも反転術式を使っても死んだ人は生き返らないし、そんなことは傑くんも分かってるはず、はずなのに。
もしかしたら生き返らせる方法があるんじゃないかって淡い期待を抱いてしまう。
「こちら側に来てくれれば特別に生き返らせてあげても良いよ。私達も彼の力は欲しいしね。」
「死んだ人間が生き返るなんて……できるの……?」
傑くんは疑いの眼差しを向ける私に微笑む。そして頷いた。
呪術界で隠されてるだけで生き返らせる方法があるのか、それとも傑くんが離反した後に方法を見つけたのか、私を仲間に引き入れるための罠なのか。
色々な考えが巡っていく。
「Aも彼の死に関わってるんだろう。もしかしたら自分が死の原因になったのかもしれない、止められたかもしれない、そう後悔したことだって……」
「……っ!」
「図星みたいだね。」
私の考えが全部読み取られてる気がして背筋に寒気が走った。
私だったら止められたかもしれない、なんてあの日からずっと後悔してることで。
痛いところを突かれて下を俯く。
傑くんはそんな私の頬を両手で包んで「少しは興味持った?」と追い打ちをかける言葉を吐いた。
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作者名:もも | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/Momo_UxxU_
作成日時:2021年2月2日 19時